インタビュー

沖縄で広がる第三者承継の新しいかたち|GO-TAs

沖縄で広がる第三者承継の新しいかたち|GO-TAs

沖縄県を拠点に、事業承継・IT・人材紹介を展開する株式会社GO-TAs。後継者不在に悩む地域企業を自社で引き継ぎ、デジタル化や人材配置を通じて再成長を目指している。若い経営チームがなぜ事業承継に挑むのか。取締役の荒川大晴さんに話を伺った。

まず、荒川さんご自身と株式会社GO-TAsについて教えてください。

株式会社GO-TAsの取締役と、有限会社すばる商事の取締役を務めている荒川大晴です。1997年生まれで、現在は28歳です。もともとの出身は滋賀県で、5年ほど前に沖縄へ移住してきました。

前職は理学療法士で、病院でリハビリの仕事をしていました。ただ、コロナ禍で入職したこともあり、現場の厳しさを感じる場面が多くありました。さらに、理学療法士という職種は給与が上がりづらく、将来を考えたときに「理学療法士としてだけではなく、別の挑戦もしたい」と思うようになりました。

その頃、ノーコードで整体院向けのアプリ開発を始めたことがきっかけで、沖縄に住む方と事業を進めるようになりました。その方から「沖縄に来たらいいじゃん」と声をかけてもらい、人生で一度くらい沖縄に住んでみてもいいかなと思ったことが移住の始まりです。

沖縄に来てからは、昼はIT、夜はバーの店長として働いていました。その後、もともと株式会社ゴータススタッフという会社があり、そこの株を買い取る形で経営陣として参画し、現在のGO-TAsに入ったという流れです。

GO-TAsでは、現在どのような事業を展開されているのでしょうか。

GO-TAsは、後継者不在の企業の事業承継を、自社で行っている会社です。支援会社として外からサポートするというよりも、自分たち自身が事業を引き継ぎ、経営に入り、伸ばしていく形を取っています。

これまでに引き継いだ事業は全部で5つあります。一つ目が高級配達弁当の事業、二つ目が具志冷凍食品という精肉店、三つ目が普天間にある小売のお弁当屋さん、四つ目が名護にあるお弁当屋さん、そして五つ目が有限会社すばる商事という、お土産品や特産品の卸を行う会社です。

もともとゴータススタッフという名前の通り、人材紹介業も行っていました。私自身が理学療法士だったこともあり、理学療法士向けのSNSアカウントを運用し、1万人から2万人規模のフォロワーを持つアカウントを作ってきました。そこから医療従事者向けの副業支援や人材紹介にも取り組んでいます。

また、会社としてはデジタルサイネージの代理店事業からスタートしています。沖縄の大きな商業施設へのサイネージ設置が、会社としての最初の事業の一つでした。そこからIT、人材、そして事業承継へと領域を広げてきました。

荒川さんが事業承継に目を向けたきっかけは何だったのでしょうか。

大きなきっかけは、沖縄でバーの店長をしていた経験です。私が運営に関わっていたのは「awabar」という、経営者やスタートアップの方が集まるバーでした。六本木がルーツで、出資やアライアンスが生まれるような場所です。沖縄版のawabarでは、ITベンチャーやスタートアップ界隈の方々と関わる機会が多くありました。

そこで多くの経営者と接する中で、正直に言うと、自分はベンチャーをゼロから立ち上げるタイプではないと感じました。出資を集めて新しいサービスをつくり、一気にスケールさせるような事業は、すごいとは思う一方で、自分には向いていないと感じたんです。

一方で、理学療法士時代に高齢の方と接する中で、廃業する人がとても多いことを聞いていました。京都で働いていた頃、織物屋さん、お肉屋さん、かまぼこ屋さんなど、100年近く続いてきたような事業でも、後継者がいないから辞めてしまうという話を何度も耳にしました。

その時はまだ「事業承継」という言葉すら知りませんでした。ただ、昔から続いてきた事業を自分たちが引き継ぎ、IT化したり、人を増やしたりして伸ばしていくことなら、自分にもできるのではないかと思ったんです。新しいものをゼロから作るよりも、古き良きものを残しながら次の成長につなげることに、自分の役割があるのではないかと感じました。

事業承継する企業を判断する際、どのような部分を見ているのでしょうか。

もちろん決算書や確定申告書などの数字も見ます。ただ、特に沖縄の個人事業主の承継では、数字だけでは判断しきれないことも多いと感じています。いわゆるどんぶり勘定で運営されているケースもあり、帳簿上の数字が実態をどこまで正確に表しているか分からないこともあります。

だからこそ、私たちは現場のライブ感をとても大事にしています。実際にお店に行き、お客さんが来ているのか、仕入れ先や卸先との関係がどうなっているのか、現場に活気があるのかを見ます。お客さんに対する態度や、リピートのお客様がどれくらいいるのかも重要です。

また、そこで働いている人がどれくらい長く続いているかも見ています。20年働いている人がいるということは、少なくとも現場として何かしら成立してきた理由があるはずです。そうした定性的な部分を、かなり重視しています。

実際に承継を検討する際には、私や他の役員も含めて十数回ほど現場に行くこともあります。お客さんとして買いに行くこともありますし、現場の雰囲気を何度も確認します。数字だけではなく、現場に流れている空気を見て判断することを大事にしています。

沖縄の地域企業を見ていて、共通して感じる課題はありますか。

一般的な課題としては、やはり人材不足とIT化の遅れがあります。若手がいない、マネージャー候補がいないという課題は、多くの地域企業に共通していると思います。また、DXという以前に、そもそもIT化が進んでいないケースもあります。POSレジやAirレジを使っていなかったり、日々の会計や原価が見えづらかったりすることもあります。

沖縄は現金商売が多いこともあり、IT化や会計管理の部分では、少し遅れている印象があります。加えて、第三者承継に対する抵抗感も強いと感じています。

私は本土から沖縄に来た、いわゆる「ナイチャー」と呼ばれる立場です。外部から来た人間が、地元で長く続いてきた事業を引き継ぐことに対して、最初は抵抗感を持たれることもあります。これは沖縄ならではの地域性もあると思います。

さらに、そもそも第三者承継という選択肢を知らない方も多いです。親族が継ぐ、従業員が継ぐという考え方はあっても、まったく外部の会社が引き継ぐという選択肢があることを知らない。だからこそ、私たち自身が実例をつくっていく必要があると感じています。

具志冷凍食品を承継することになった背景を教えてください。

具志冷凍食品の店舗前に立つ従業員のみなさん

もともと私たちは、精肉店を引き継ぎたいと考えていました。ビジネス的な観点で言うと、卸の事業をずっとやりたかったんです。私も代表の五十嵐も飲食に関わっていたので、飲食店に対して何かサービスを提供したいという思いがありました。

ただ、今から自分たちで新しく精肉店を作って、同じような商売を始めるのは難しいと考えていました。仕入れ先との関係、目利き、既存のお客様、地域での信用などは、一朝一夕ではつくれません。だからこそ、精肉店の承継案件がないかを、以前から事業承継・引継ぎ支援センターに相談していました。

その中で紹介いただいたのが、具志冷凍食品でした。初めて見に行ったときは、正直かなり衝撃を受けました。こんなお店があるのかと思いましたし、お客様もどんどん来ていました。卸も積極的に行っていて、地域の中でしっかり商売が成り立っていることを感じました。

一方で、従業員を含めて高齢化が進んでいる印象も強くありました。このままでは将来的に続けるのが大変になるだろうという課題感もありました。ただ、それ以上に、ここにはまだまだ伸びしろがあると感じました。

具志冷凍食品のどこに可能性を感じたのでしょうか。

一つは、卸先をまだまだ増やせると感じたことです。具志冷凍食品は那覇空港の近くにあり、少し足を伸ばせば国際通りにも近い場所にあります。本来であれば、観光客が集まる飲食店や沖縄料理店など、もっと広いエリアに販路を広げられるはずです。しかし、高齢化の影響もあり、これまでは遠くまで営業や配送を広げることが難しかった部分がありました。

もう一つ大きかったのが、山羊刺しです。沖縄では山羊肉を「ヒージャー」と呼び、食文化として根付いています。具志冷凍食品は山羊刺しで知られており、前オーナーの具志吉昭さんは山羊の目利きに非常に優れた方でした。良い山羊を仕入れる力があり、そこに大きな価値があると感じました。

具志冷凍食品の山羊刺し

山羊肉は好きな人にとっては非常に魅力のある食材です。沖縄県内はもちろん、内地の沖縄居酒屋や、山羊肉が好きなマニア層に向けてECで販売する可能性もあると思いました。すでに人気がある商品だからこそ、販路を広げればさらに伸ばせる。そこが、承継に踏み切った大きな理由です。

承継前の具志冷凍食品には、どのような課題がありましたか。

大きく分けると、会計、人事、営業の三つに課題を感じていました。

まず会計面では、原価率がほとんど把握されていませんでした。日々の売上がどのくらいあり、どの商品でどれくらい利益が出ているのかが見えづらい状態でした。商売としては成立していましたが、経営判断をするための数字が整っていなかったんです。

次に人事面です。従業員の高齢化が進んでおり、このままではどこかで限界を迎えるだろうと感じていました。長く働いてくださっている方がいることは強みでもありますが、次の世代へつなげていくためには、若い人材やマネージャーの配置が必要でした。

そして営業面では、卸先を広げる余地がありました。既存のお客様との関係はありましたが、高齢化の影響もあって、新しいエリアや新しい飲食店に積極的に営業していくことが難しかった。だからこそ、私たちが入ることで、会計を整え、人を配置し、営業や販路開拓を進めることができると考えました。

承継後、最初に取り組んだことは何でしたか。

本当は、ECサイトを作ったり、SNSや広告を強化したり、外向きの施策をすぐに進めたい気持ちもありました。ただ、実際にはまず内部統制に時間をかけました。

承継してから1年半ほどは、会計や仕入れ、原価率、売上の把握など、会社の中身を整えることに力を入れてきました。どのくらい売上があり、どのくらいの原価率で、どこまでいくと赤字になり、どこから黒字になるのか。そのラインを把握する必要がありました。

また、仕入れ先との関係も一つひとつ確認しました。どの仕入れ先が何に強いのか、どれくらいの量を卸してくれるのか、これまでどのような関係値があったのか。そういったことを、この1年ほどでようやく理解できてきた感覚です。

今、まさにECサイトの準備や販路拡大に取り組んでいる段階です。外から見ると、すぐに大きな変化が起きるように見えるかもしれませんが、実際の承継では、まず現場と数字を整えることが非常に重要だと感じています。

承継後、お客様や取引先の反応はいかがでしたか。

意外かもしれませんが、承継したことに気づいていないお客様も多いです。屋号も変えていませんし、お店の名前もそのまま残しています。だから、後から「あ、承継したんだ」という雰囲気の方もいます。

私たちは、それがすごく良い承継の形だと思っています。お客様からすると、具志冷凍食品は具志冷凍食品のままでいい。私たちGO-TAsの名前が前面に出なくてもいいと思っています。

もちろん、前オーナーの吉昭さんが現場に出なくなったことに驚かれる方はいます。ただ、屋号や商品、常連のお客様との関係性を大きく変えずに続けることで、地域にとっての安心感は残せていると思います。

事業承継では、何を変えるかに注目されがちですが、何を変えないかも同じくらい大切です。私たちは、必要以上に自分たちの色を出すのではなく、その事業が長く愛されてきた理由を残すことを大事にしています。

GO-TAsが承継する事業には、どのような共通点がありますか。

一番意識しているのは、事業同士の連動性です。たとえば、私たちは高級配達弁当と、小売のお弁当屋さん、そして具志冷凍食品という精肉店を承継しています。

高級配達弁当は、価格帯としては1,500円から5,000円ほどのお弁当を扱っています。一方、小売のお弁当屋さんは600円から1,200円ほどの価格帯です。沖縄はお弁当文化が非常に強く、コンビニ弁当ではなく、街のお弁当屋さんで買う文化が根付いています。イベントや集まりの規模、用途によって、高級弁当と日常的なお弁当の両方に需要があります。

そこに具志冷凍食品が加わることで、肉の仕入れを自社グループ内で連動させることができます。お弁当屋さんにとって原価率の高さは大きな課題ですが、精肉店を承継したことで、仕入れや原価の面でも改善できる可能性があります。

単独の事業として見るだけでなく、承継した事業同士が組み合わさることで、全体として強くなる。そうした連動性は、GO-TAsが事業承継を進める上でとても重視している部分です。

承継後の人材配置やマネジメントは、どのように行っているのでしょうか。

基本的には、もともとGO-TAsにいる社員を、承継先のマネージャーとして配置することが多いです。承継した事業の中から店長を上げるというよりも、自社のメンバーを現場に配属し、経営陣と現場をつなぐ役割を担ってもらうイメージです。

なぜそれを大事にしているかというと、経営陣への情報伝達が非常に重要だからです。現場で何が起きているのか、数字がどうなっているのか、従業員やお客様の反応がどうなのか。正しい情報が経営側に届かなければ、次の判断ができません。

承継後は、現場の信頼関係を守りながらも、経営判断に必要な情報をきちんと吸い上げる必要があります。その意味で、マネージャーの存在は非常に重要です。GO-TAsとして複数の事業を承継していく上でも、人材配置と情報共有の仕組みづくりは大切にしています。

GO-TAsが事業承継で大切にしている価値観は何ですか。

一言で言うと、「残すものは残し、変えるものは変える」ということです。当たり前のように聞こえるかもしれませんが、これが一番重要だと思っています。

たとえば、屋号や前オーナーの存在、長年のお客様との関係などは、残すべきものです。具志冷凍食品でも、前オーナーの吉昭さんには顧問のような形で関わっていただいています。地域のお客様にとって、その存在自体が安心感につながるからです。

一方で、変えなければ事業が生き残れないものもあります。たとえば、原価率が合っていない商品は、勇気を持って値上げする必要があります。安さが売りだったとしても、そのままでは赤字になり、結果的に誰も守れなくなってしまうからです。

もちろん、先代から「値上げはしない方がいい」と言われることもあります。その場合は、数字を出して丁寧に説明します。ただ、ロジックだけでは伝わらないことも多いので、「僕らを信じて、まずはやらせてください」とお願いすることもあります。言い合いにするのではなく、リスペクトを持ちながら必要な変化を進める。それが、私たちが大事にしている承継の姿勢です。

今後、GO-TAsとしてどのような役割を果たしていきたいですか。

沖縄には、伝統的な事業や長く続いている会社がたくさんあります。他の地域と比べても、地域に根ざした商売が多いと感じています。一方で、M&Aや第三者承継はまだまだメジャーではありません。特に中小企業や個人事業主の第三者承継は、十分に広がっていないと感じています。

だからこそ、私たちの役割はユースケースになることだと思っています。第三者承継を行い、事業をしっかり伸ばし、売上を上げ、利益を出し、従業員の給料も上げていく。そのモデルを確立したいです。

沖縄で「第三者承継といえばGO-TAsだよね」と言われる存在になりたいと思っています。私たちが実例をつくることで、事業承継や第三者承継という選択肢の認知を広げていきたいです。

そして、私たちができる範囲で、可能な限り多くの事業を次の世代につないでいきたい。古き良きものを残しながら、ITや人材の力で成長させていく。GO-TAsとして、そのような事業承継の形を沖縄から広げていきたいと考えています。

荒川 大晴のプロフィール写真
プロフィール

荒川 大晴

株式会社GO-TAs 取締役

株式会社GO-TAs 取締役、有限会社すばる商事 取締役。1997年、滋賀県生まれ。前職は理学療法士として病院でリハビリに従事。ノーコードでの整体院向けアプリ開発をきっかけに沖縄の事業者と知り合い、5年ほど前に沖縄へ移住。移住後は昼にIT、夜は経営者やスタートアップが集まるバー「awabar沖縄」の店長を務め、多くの経営者と接するなかで、ゼロから立ち上げるよりも既存の事業を引き継いで伸ばすことに自らの役割を見出す。株式会社ゴータススタッフの株式を買い取る形で経営陣に参画し、現在のGO-TAsへ。後継者不在の企業を自社で引き継ぐ第三者承継に取り組み、高級配達弁当、精肉店の具志冷凍食品、県内2店舗の弁当店、土産・特産品卸の有限会社すばる商事と、これまでに5つの事業を承継している。信条は「残すものは残し、変えるものは変える」。

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