形骸化した定款を「攻めの経営ツール」に変える|事業承継で定款を見直す価値
会社を設立したときに作った定款を、その後じっくり読み返したことはあるでしょうか。多くの中小企業では、定款は作ったきりで、金庫の奥にしまい込まれています。しかし会社法のもとでは、定款は「守りの書類」から「攻めの経営ツール」へと役割を変えました。この記事では、現経営者と後継者の双方に向けて、事業承継で定款を見直す価値を整理します。
定款は「会社の憲法」
定款とは、会社の目的や運営のルールを定めた、いわば会社の憲法です。会社の名前、事業の目的、本店の所在地といった基本事項から、株式や株主総会のルールまで、会社の土台を定めています。

定款に書く事項は、大きく3種類に分かれます。必ず書かなければならない事項、書いておくことで初めて効力が生じる事項、そして会社が自由に定められる事項です。とくに後ろの2つに、自社に合ったルールを盛り込む余地があります。
会社法で定款の「自由度」が広がった
かつての定款は、法律で決められた最低限の内容を書くだけの、形式的な書類になりがちでした。ところが会社法のもとでは、定款に会社独自のルールを盛り込める範囲が大きく広がりました。
これにより、定款は単なる形式ではなく、会社を自分たちの意思で運営するための道具になりました。とくに、社長やその家族が株式の大半を持つ中小の同族会社では、この自由度を活かして、承継しやすい会社のかたちを自分たちで設計できます。
定款でできる、事業承継に効くこと
定款の見直しは、事業承継の場面で具体的に効いてきます。代表的なものを挙げます。
| 定款でできること | 事業承継での効果 |
|---|---|
| 株式の譲渡に会社の承認を必要とする | 好ましくない第三者へ株式が渡るのを防ぐ |
| 相続で株式を得た人へ売渡しを請求できるようにする | 分散した株式を会社に集め直せる |
| 取締役の任期を調整する | 役員体制を計画的に入れ替えられる |
| 種類株式を発行できるようにする | 議決権と配当を切り分けた承継設計ができる |
いずれも、後継者に経営権を集めやすくするための備えです。定款にあらかじめ盛り込んでおけば、いざというときに慌てずにすみます。
定款の変更には特別決議が必要
ただし、定款を変えるには株主総会の特別決議(議決権の3分の2以上の賛成)が必要です。
つまり、後継者や現経営者の側で3分の2以上の株式を確保できているうちに見直しておくことが大切です。株式が分散してからでは、定款の変更そのものが通しにくくなります。まだ株式をしっかり握れているうちに、承継に備えた定款へ整えておく——これが順番として理にかなっています。
見直しの進め方
定款の見直しは、次のような流れで進めると整理しやすくなります。
- 現状の定款を読み返す:いつ作ったものか、実態と合っているかを確認します。
- 承継の課題を洗い出す:株式の分散、役員体制、後継者への集約など、自社の課題を挙げます。
- 盛り込むルールを検討する:課題に対して、定款でどんな備えができるかを考えます。
- 専門家と整える:定款変更は登記にも関わるため、専門家と一緒に文言を固めます。
古いままの定款は、承継の思わぬブレーキになることがあります。まずは一度、自社の定款を開いてみることから始めてください。
まとめ
- 定款は会社の憲法であり、会社法のもとで独自ルールを盛り込める自由度が広がった。
- 株式の譲渡制限や相続人への売渡請求など、承継に効く備えを定款で用意できる。
- 定款変更には特別決議(3分の2以上)が必要なので、株式を握れているうちに見直す。
- まずは現状の定款を読み返し、承継の課題に照らして必要な備えを検討する。
定款は、放っておけば形だけの書類ですが、活かせば承継を支える武器になります。承継を考え始めたら、定款の見直しを計画に加えてください。