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後継者が知るべき取締役の責任|善管注意義務・忠実義務をやさしく解説

後継者が知るべき取締役の責任|善管注意義務・忠実義務をやさしく解説

後継者が取締役になると、従業員のときにはなかった重い責任を負います。「経営を任される」とは、裏を返せば「果たすべき義務が課される」ということです。この記事では、これから役員になる後継者と、それを見守る現経営者に向けて、取締役が負う主な責任をやさしく整理します。

取締役は「会社のために尽くす」重い立場

取締役は、会社の経営を委ねられた立場として、会社のために誠実に職務を果たす義務を負います。その中心にあるのが、善管注意義務と忠実義務という2つの基本です。

取締役の4つの義務を、会社という建物を支える4本の柱として示す図。善管注意義務・忠実義務・競業避止義務・利益相反取引の制限が、それぞれ会社を支える柱として並ぶ。

言葉は難しく聞こえますが、根っこにあるのは「自分の利益より会社の利益を優先する」というシンプルな考え方です。

① 善管注意義務:立場にふさわしい注意を尽くす

善管注意義務とは、「善良な管理者としての注意義務」を縮めた言葉です。取締役という立場にある人として、通常期待される程度の注意を払って職務を行う義務を指します。

たとえば、重要な契約を結ぶときに、必要な情報を集めず、確認もせずに判断すれば、この注意義務を怠ったと見られる可能性があります。「知りませんでした」では済まされないのが、経営を担う立場の重さです。

② 忠実義務:会社の利益を自分の利益より優先する

忠実義務とは、会社のために忠実に職務を行い、自分や第三者の利益を会社の利益より優先してはならない、という義務です。

会社の立場を利用して個人的に得をしたり、会社に不利益を与えてまで身内を優遇したりすることは、この義務に反します。善管注意義務と重なる部分もありますが、「会社を裏切らない」という方向性を示す義務だと捉えると分かりやすいでしょう。

③ 競業避止義務・④ 利益相反取引の制限

上の2つから派生して、具体的な場面での制限もあります。

  • 競業避止義務:取締役が、会社と競合する取引を自分のために行う場合、事前に会社の承認が必要です。会社の顧客や情報を使って抜け駆けすることを防ぐためです。
  • 利益相反取引の制限:取締役が会社と直接取引をする場合や、会社が取締役の借金を保証する場合など、会社と取締役の利益がぶつかる取引には、会社の承認が必要です。

いずれも、取締役の立場を私的に使わせないためのルールです。

身近に起きやすい「利益相反」の例

利益相反取引は、中小企業の日常でも起こりがちです。たとえば、社長が個人で持っている土地や建物を会社に貸したり売ったりする、社長個人の借入を会社が保証する、といったケースがこれにあたります。

こうした取引は、条件しだいで会社が不利益を被る恐れがあるため、勝手に進めてはいけません。取締役会(または株主総会)の承認を得て、記録を残しておくことが必要です。オーナー企業では「会社のものも自分のもの」という感覚になりがちですが、会社と個人は別の人格です。承継を機に、社長個人と会社の取引を一度洗い出し、手続きが踏まれているかを確認しておくと安心です。

責任を怠るとどうなるか

これらの義務を怠り、会社に損害を与えた場合、取締役はその損害を賠償する責任を負うことがあります。場合によっては、会社だけでなく取引先などの第三者に対して責任を問われることもあります。

後継者にとって大切なのは、過度に恐れることではなく、「会社のために誠実に、必要な確認を尽くして判断する」という基本を身につけることです。これができていれば、通常の経営判断で過大な責任を負うことは多くありません。

まとめ

  • 取締役は善管注意義務(立場にふさわしい注意)と忠実義務(会社の利益を優先)を負う。
  • そこから、競業避止義務利益相反取引の制限といった具体的なルールが生まれる。
  • 義務を怠って会社に損害を与えれば、賠償責任を問われることがある。
  • 後継者は恐れるより、「誠実に・確認を尽くして判断する」基本を身につけることが大切。

責任の中身を知っておくことは、後継者が自信を持って経営に踏み出す土台になります。登用の前に、あわせて共有しておきましょう。

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