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会社法とは何か、なぜ事業承継に関わるのか|承継前に知っておきたい基礎

会社法とは何か、なぜ事業承継に関わるのか|承継前に知っておきたい基礎

事業承継を進めると、株式を後継者へどう渡すか、株主総会でどう決めるか、役員をどう入れ替えるか、といった話が次々に出てきます。これらはすべて、会社法という一つの法律のルールの上で動いています。会社法を知らないまま手続きだけ進めると、思わぬところでつまずきます。この記事では、現経営者と後継者の双方に向けて、会社法とは何かと、それが承継にどう関わるのかを整理します。

この記事でわかること

  • 会社法がどんな法律で、2006年に何が変わったのか
  • 事業承継の手続きが会社法の上で動いているという構造
  • 中小企業ほど会社法の自由度が効いてくる理由
  • 承継のどの場面で、会社法のどの部分を見ればよいのか

会社法とは?

会社の設立から運営、株式、株主総会や取締役といったしくみまで、会社に関わるルールをまとめて定めた法律です。2006年5月に施行された、比較的新しい法律でもあります。

それ以前は、会社に関するルールが商法や有限会社法など複数の法律に分かれて存在していました。会社法は、それらを一つに統合し、再編成して生まれたものです。このとき、いくつか大きな見直しが行われ、その一部は今の事業承継の実務にも影響しています。

会社法の成り立ちを示す図。2006年以前は商法・有限会社法・その他の関連法に分かれていたものが、2006年に統合・再編されて会社法になった流れと、主な変更点(有限会社の廃止・しくみの柔軟化・定款の自由度拡大)を示す。

なぜ会社法が事業承継に関わるのか?

事業承継はひとことで言えば「会社の所有と経営を、次の世代へ引き継ぐこと」です。その所有を表すのが株式であり、経営を決める場が株主総会や取締役会。そのどちらのルールも会社法が定めているからです。

つまり、事業承継の手続きは会社法というルールブックに沿って進めることになります。ここを押さえておくと、専門家に相談するときも話が早くなります。「株を後継者に渡したい」という相談も、会社法の言葉に翻訳すれば「譲渡制限株式の承認手続きを経て、株主名簿を書き換える」という具体的な作業になります。

なぜ中小企業ほど、会社法の自由度が効くのか?

会社法が、株式に譲渡制限を設けている会社に対して、大幅な設計の自由を認めているからです。中小の同族会社の多くがこれにあたります。

上場企業は、不特定多数の株主が株式を売買します。そのため、株主を守るための厳格なルールが必要です。一方、株主が数人しかおらず、勝手に株式が売られない会社では、そこまで硬いルールを課す必要がありません。むしろ、会社の実情に合わせて自由に設計できたほうが合理的です。

そこで会社法は、株式の譲渡制限の有無で会社を二つに分け、制限がある会社には機関設計や定款の自由度を大きく認めました。取締役会を置くかどうか、監査役を置くかどうか、株式にどんな内容を持たせるか。これらを自社で選べるのは、この設計思想のおかげです。この自由度をどう使うかが、承継のしやすさを左右します。

会社法で大きく変わった3つのこと

会社法の誕生にともなって見直された点のうち、事業承継に関係が深いものを3つ挙げます。

変わった点事業承継での意味
有限会社の制度が廃止された新しく有限会社は作れなくなった。以前からの有限会社は特例有限会社として存続。まず自社がどの形態かを確認する
会社のしくみを柔軟に設計できる取締役会や監査役を置くかどうかを会社が選べる。小さな同族会社ほど、身軽なしくみに整えやすくなった
定款で決められる範囲が広がった会社ごとの独自ルールを定款に書き込めるようになり、株式の承継や少数株主への対応に活用できる

とくに大切なのが、3つ目の定款の自由度が広がったという変化です。

有限会社のままの会社は、どうすればよいのか?

そのままで問題ありません。 2006年以降、既存の有限会社は「特例有限会社」という株式会社の一種として、当然に存続しています。あらためて手続きをする必要はありません。

ただし、通常の株式会社とは異なる扱いがいくつかあります。承継の設計に入る前に、自社がどちらなのかを確認してください。

事業承継で会社法が効いてくる4つの場面

会社法は、承継の次のような場面で具体的に効いてきます。

  1. 株式を後継者に渡すとき:誰が何株持つかは会社法の株式のルールに沿って動く。分散した株式を集める手続きにも関わる
  2. 株主総会で重要事項を決めるとき:定款変更や事業の売却などは、賛成を集めるべき割合が会社法で決まっている
  3. 役員を入れ替えるとき:後継者を取締役に登用する、古参の役員に退いてもらう、といった手続きも会社法に従う
  4. 会社のしくみを見直すとき:取締役会や監査役を置くかどうかなど、承継を機に会社の設計を整えられる

会社法が効く4つの場面を示すマップ図。中央の「会社法」から、株式の承継・株主総会の決議・役員の入れ替え・会社のしくみの見直しの4方向へ広がる様子を示す。

このどれもが、後継者が安心して経営を引き継ぐための土台になります。

承継のとき、会社法のどこを見ればよいのか?

条文をすべて追う必要はありません。承継で関わる論点は、次のようにおおまかに整理できます。

承継の場面会社法で見るところ
株式を渡す・集める譲渡制限株式の承認、相続人等への売渡請求、自己株式の取得
支配権を設計する種類株式(拒否権付株式など)、属人的定め
総会で決める普通決議・特別決議の要件、招集手続
役員を入れ替える取締役の選任・解任、任期、取締役会の設置
会社の器を整える定款変更、機関設計の見直し

自社の課題がどの行にあたるかが分かれば、専門家への相談も具体的になります。

定款は「会社の憲法」。なぜ承継前に見直すのか?

定款とは、会社の目的や運営ルールを定めた、いわば会社の憲法です。作ったまま何年も見直されず、しまい込まれているケースは少なくありません。

しかし会社法のもとでは、この定款に書き込める範囲が広がりました。株式の承継をスムーズにするしくみや、少数株主への対応を、定款であらかじめ定めておけます。承継を考え始めたら、まず定款を引っぱり出して現状を確認することをおすすめします。

会社法を知らないまま進めると、何が起きるのか

よくあるのが、手続きの順番を誤って、やり直しになるケースです。たとえば株式を後継者に譲渡したつもりが、譲渡制限株式の承認手続きを経ておらず、会社に対して株主であることを主張できない。あるいは、定款を変えないまま取締役会の廃止を進めようとして止まる。

もう一つは、使えたはずの選択肢を知らずに終わるケースです。種類株式や属人的定めを使えば穏やかに解決できた問題を、力ずくの交渉で押し切ろうとして関係を壊してしまう。会社法の全体像を知っているだけで、こうした遠回りは避けられます。

まとめ

  • 会社法は、株式・株主総会・役員など会社のルールをまとめて定めた法律(2006年施行)。
  • 事業承継の手続きは、この会社法のルールの上で動く。
  • 株式に譲渡制限がある非公開会社には、大きな設計の自由が認められている。中小企業の多くがこれにあたる。
  • 承継で会社法が効くのは株式の承継・株主総会・役員の入れ替え・会社のしくみの見直しの場面。
  • 有限会社のままでも問題ないが、特例有限会社という独自の扱いがあることは押さえておく。
  • 定款は「会社の憲法」。承継前にまず現状を確認しておく。

公開会社と非公開会社の区別、機関設計の柔軟化、定款自治は、中小企業診断士試験の「経営法務」で会社法を学ぶときの出発点です。「株式が自由に売買されるかどうかで、必要なルールの硬さが変わる」という一本の筋を押さえておくと、細かい規定も理屈でつながります。

会社法は難しく感じるかもしれませんが、承継に関わる部分は限られています。全体像を押さえておくだけで、次の一手が考えやすくなります。

よくある質問

経営者が会社法そのものを読む必要はありますか?
条文を読み込む必要はありません。ただし、株式・株主総会・役員・定款という四つの領域が会社法で決まっていることを知っておくと、専門家との打ち合わせで話が早くなります。「何ができて何ができないか」の見当がつくだけで十分です。
うちは有限会社のままですが、承継で問題はありますか?
そのままでも問題ありません。2006年以降は特例有限会社として、株式会社の一種として存続しています。ただし決算公告が不要、取締役の任期に制限がないなど独自の扱いがあるため、承継の設計では自社がどちらの形態かを最初に確認してください。
定款はどこにありますか。手元にない場合はどうすればよいですか?
会社の本店に備え置く義務があります(会社法31条)。手元にない場合は、設立時に定款認証を受けた公証役場で謄本を請求できるほか、顧問税理士や司法書士が写しを保管していることもあります。まずは探すところから始めてください。
会社法が改正されたら、定款も直す必要がありますか?
改正の内容によります。定款の記載が改正後の法律と食い違う場合は見直しが必要です。ただし近年の改正は上場企業向けの内容が中心で、中小企業への影響は限定的です。承継のタイミングでまとめて点検するのが現実的です。

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