インタビュー

従業員承継で守った老舗の技術。産業用ロボットで現場の課題に向き合う足利技研のものづくり|足利技研

従業員承継で守った老舗の技術。産業用ロボットで現場の課題に向き合う足利技研のものづくり|足利技研

栃木県足利市に拠点を置く株式会社足利技研は、産業用ロボットや省力化機器、自動化システムの設計・製作を手がける企業です。1945年に桑子電機商会として創業し、現在は工場の自動化やロボットシステムの導入を、企画から設計、製作、据付、教育指導、アフターフォローまで一貫して支援しています。

代表取締役社長を務める大野和俊さんは、18歳で同社に入社。先代のもとで技術だけでなく、原価管理や案件管理、経営に必要な数字の見方まで学んできました。その後、M&Aや廃業という選択肢も浮上するなかで、従業員の立場から会社を引き継ぐことを決断します。なぜ大野さんは、足利技研を守る道を選んだのか。そして、どのような組織づくりで社員が自律的に動く会社を育ててきたのか。お話を伺いました。

まず、大野社長が入社された頃のことを教えてください。

入社したのは18歳の頃です。当時はまだ今のようにパソコンで何でも管理する時代ではありませんでした。会社では、案件ごとにどれくらいの時間がかかったのか、どんな材料をいくらで買ったのかを、手書きで細かく記録していました。今でいう原価管理や案件管理ですね。

そうした数字は、特別に隠されているものではなく、社内でオープンに扱われていました。私自身も、それを見ながら自然と覚えていきました。教え込まれたというより、見て、やらせてもらって、学んでいったという感覚です。

その後、パソコンが少しずつ一般的になってきた頃に、私がデータベースソフトを使って、作業時間の集計をパソコンで管理できるようにしました。最初は独学です。本を読んで、自分で試しながらつくりました。購入品の管理なども含めて、やがて専用ソフトを開発してもらい、少しずつデジタル化していきました。

先代から事業を引き継ぐことは、いつ頃から意識されていましたか。

先代はとても真面目で、実直な方でした。仕事には厳しいところもありましたが、やらせてくれる方でもありました。見てもらいながら、任せてもらいながら学ぶ。その環境があったことは、自分にとって大きかったと思います。

先代は、いずれ従業員に会社を譲るという考えも持っていました。私自身も40代くらいから、もしかしたら自分が会社を背負うことになるかもしれないという意識はありました。長年勤める中で、実務面では一通りのことができるようになっていましたし、お客様との関係も含めて、仕事を続けていくこと自体には大きな不安はありませんでした。

M&Aや廃業ではなく、従業員承継を選ばれたのにはどのような背景があったのでしょうか。

先代が亡くなった後、一時は奥様が社長に就かれ、私たち実務側が会社を支える形になりました。その後、年齢のこともあり、M&Aや廃業という選択肢も出てきました。借入がほとんどなかったので、廃業しても大きな問題はないという考え方もありました。

ただ、会社は創業者にとって子どものような存在です。売ってしまうのも、なくしてしまうのも、やはり簡単には決められない。私自身にとっても、足利技研は18歳からずっと働いてきた場所であり、自分の生活を支えてくれた場所でもありました。M&Aで経営者が変われば会社がどうなるか分からない。廃業すれば自分たちの仕事もなくなる。そう考えると、自分で引き継ぐことが一番リスクの少ない選択肢でもあったのです。

株式の承継では、持株会社を設立し、銀行融資を受けて株式を買い取る方法を選びました。時間が限られていたこともあり、銀行と相談しながらスムーズに進められる形を取りました。また、前社長には黄金株を持っていただきました。完全に離れてしまうのは寂しいという気持ちもあったと思いますし、少し経営に関われる余地を残す意味もありました。

現在の組織づくりで大切にしていることは何ですか。

うちは、いわゆるピラミッド型の組織ではありません。役職もほとんどありません。社長室もなく、私も同じ場所で仕事をしています。少人数の会社だからこそ、みんなが自分の意思で動けることが大事だと思っています。

社員から相談を受けたときも、できるだけ否定しないようにしています。大きな問題がなければ「やってみたら」と伝える。最初から否定されると、次から聞くこと自体が嫌になってしまいます。足利技研の仕事は、いつも同じものをつくる仕事ではありません。お客様の課題に合わせて、毎回違うものを考え、世の中にある技術や製品をどう組み合わせれば最適なシステムになるかを考える仕事です。

だからこそ、新しい商品や技術を自分で調べ、展示会に行き、実際に試してみるような自発性が必要になります。会社として情報提供を行うことに加え、行きたい展示会があれば、就業時間中でも行くことができるような風土にしています。社員が自分で学び、試し、考える環境をつくることが、技術力の維持にもつながっているのです。

株式会社足利技研の社屋外観

ものづくりで、大切にしていることは何ですか。

私たちの仕事は、お客様の悩みを一緒に解決していく仕事です。生産現場で「ここが使いづらい」「この作業を自動化したい」という声を聞き、できること、難しいこと、費用がかかることを丁寧に話し合いながら形にしていきます。

既製品を売るのではなく、一から考えて、一回でつくり上げて納める。試作を何度も重ねられるものではないので、リスクも大きい仕事です。だからこそ、無理に仕事を取りすぎないことも大切にしています。人が疲弊すれば、良い発想は生まれません。会社を大きくすることよりも、社員が育ち、お客様にきちんと向き合える規模を守ることを重視しています。

産業用ロボットのティーチングペンダントを操作する様子

これからの事業承継に必要なことは何だと思いますか。

従業員承継は、会社にとってはとても良い選択肢だと思います。従業員は会社の仕事も技術も、お客様との関係もよく知っています。しかし、多くの場合、株式を買い取るだけの資産を持っていません。良い会社ほど株価は高くなり、承継のハードルも上がってしまいます。

だからこそ、従業員が会社を引き継ぎやすくなる制度がもっと必要だと思います。良い会社が廃業せずに残っていくことは、地域にとっても、国にとっても大切なことです。やりたい人が、きちんと会社を継げる社会になってほしいですね。

大野 和俊のプロフィール写真
プロフィール

大野 和俊 Ohno Kazutoshi

株式会社足利技研 代表取締役社長

18歳で株式会社足利技研に入社し、産業用ロボットや省力化機器、自動化システムの設計・製作に携わる。先代のもとで技術だけでなく、原価管理や案件管理、経営に必要な数字の見方を実務を通じて学ぶ。先代の逝去後、M&Aや廃業という選択肢もあるなかで、従業員承継により会社を引き継ぐことを決断。現在は、社員が自律的に考え動くフラットな組織づくりを進めながら、お客様と共に現場の課題を解決するものづくりに取り組んでいる。

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