インタビュー

ゼロからの起業だけが道じゃない〜「第三の起業」承継起業家という生き方【後編】|ロケットスター

ゼロからの起業だけが道じゃない〜「第三の起業」承継起業家という生き方【後編】|ロケットスター

後継者不在に悩む中小企業へ、次の経営者と資金をセットで届けるロケットスター。後編では、実際に会社を承継した「承継起業家」たちの素顔や、彼らに求められる覚悟、そしてAIを組み込んだ独自の経営支援の仕組みについて、代表取締役社長の荻原猛さんに伺いました。承継起業家として、あるいは投資家として、この挑戦に加わりたいと考える方へのメッセージもお届けします。

ロケットスターに出資している投資家たちは、どんな想いでこの事業を応援しているのですか。

インタビューに答えるロケットスター代表取締役社長の荻原猛さん

出資してくださっている方々は、財務リターンだけを目的に集まっているわけではありません。私たちのLPの多くは、上場企業の創業者や経営者です。デジタルホールディングスの創業者、レジルの創業者、ファインドスターの創業者——いずれも自ら会社を作り、育て、社会に価値を提供してきた方々です。そうした方々が共通して持っているのは、「日本の中小企業がこのままではいけない」という問題意識と、事業承継という社会課題への本気の想いです。

あるLP投資家の方がこんなことをおっしゃっていました。「M&A投資は難しい。会社を売るオーナーはたいてい現場を離れる。ビジネスモデルや組織を買うことになるが、それがうまくいかない。でもロケットスターは新しい社長をセットで承継する。だから信じてみた」と。そして1号ファンドの実績を見て、「全社が伸びているのは素晴らしい。初年度からこれほど業績が改善するとは思わなかった」とおっしゃっていただきました。最初は半信半疑だった方が、実績を見て確信に変わった。それが私たちにとって最も嬉しい言葉でした。

「起業家が買う、起業家が支える、起業家が出資する」。これがロケットスターのエコシステムの設計思想です。出資者の皆さんは単なる資本の提供者ではなく、志を共にする仲間です。LP起業家からの顧客紹介や業務提携が、承継先企業の事業成長に直接貢献するケースも生まれています。財務リターンと社会課題の解決が一致する仕組みを、私たちは本気で作ろうとしています。

実際に会社を承継した「承継起業家」たちは、どんな人たちですか。どんな経歴・背景を持った方々が挑戦しているのでしょうか。

500名超と面談し、適格と判断した確率は約10%。現在5名が承継起業家として会社を経営しています。一言で言えば、「経営の修羅場を知っている人たち」です。年齢は30代から60代と幅広く、上場企業の社長経験者、自ら起業してEXITした方、PEファンドで企業の社長を務めた方など、バックグラウンドは様々です。

例えば北方靖人さんは元りそな銀行の法人営業出身で、ウィゴーという会社の取締役副社長として12年間で年商10億円から400億円規模に成長させた実績を持つ方です。その後、経営不振に陥っていたレスポートサックジャパンの代表に就任してV字回復を実現し、今はキャセリーニのトップとしてECと商品開発の改革を進めています。宮田彩也さんはヤフーを経て自ら起業し、5年で電通グループへ売却した経験を持ち、現在も電通デジタルアンカーの代表を務めながら承継起業家として活躍しています。飯島隼人さんは広報・PRの大手グループで執行役員を務めた後、2025年にアングルクリエイトの代表取締役に就任し、BtoBマーケティングの仕組みを一から構築して業績を大きく伸ばしています。

全員に共通しているのは、「自分の業界経験がある企業を承継している」という点です。知らない業界に飛び込むのではなく、自分が深く理解している市場で勝負する。スーツを着た外部アドバイザーではなく、従業員と同じ目線で汗をかく経営者として現場に入る。これがノーライトオフ実績の根拠の一つだと思っています。

承継起業家に最も必要な覚悟や資質とは何ですか。向いている人・向いていない人を率直に教えてください。

選定基準は四つあります。業界知見の深さ、経営者としての意志と覚悟(胆力)、人間的魅力、そしてロケットスターの価値観との適合性です。その中で特に注視しているのは、最初の二つです。

一つ目は業界知見の深さ。自分が深く理解している領域でしか、本質的な経営判断はできません。財務モデルでは拾えない現場の感覚を持っているかどうかが、投資判断の精度に直結します。深い知見があるからこそ、芯を食った構想と戦略が最初からある。どの業界で、何を経験してきたか。そしてその経験の中で、何かを本気でやり切ったことがあるか。そこを最も重視しています。二つ目は胆力、つまり経営者としての意志と覚悟です。承継直後は、前オーナーとの摩擦、幹部の退職、組織の混乱が同時に来ることもある。社長は最終ラインです。そこから逃げない人かどうかが最初の関門です。これは話し方や印象では分かりません。だから必ずエピソードを聞きます。追い詰められた経験、乗り越えた経験はあるか。そのとき何を考えて、どう動いたか。きれいな成功談より、泥臭い失敗とそこからの立ち上がりの話の方が、はるかに信頼できます。

向いていない人を率直に申し上げます。「承継した先は全戦全勝を目指す」というのが私たちのスタンスです。経営とは、誰かに選んでもらうものではなく、自ら選び取るものです。リスクを最小化したい、安定したキャリアが欲しいという方には向いていない。「そんなに重く捉えられたらサーチャーなんて出来ません」ということであれば、やらなくて結構です。それほどの覚悟がある方だけが、承継起業家として機能できると思っています。また「一人で戦う社長」ではなく「チームで戦う経営者」であることも大切にしています。人に頼ることを弱さと思う方にも向いていないかもしれません。

ロケットスターは承継後、どのように会社の成長を支えるのですか。AIの活用も含めて具体的に教えてください。

承継直後の100日間は特に濃密に伴走します。GPと承継起業家が共同で「100日プラン」を設計し、何を最優先すべきかを明文化します。承継後の混乱を最小化し、最初の100日でスタートダッシュを切れるかどうかが、その後の経営の質を大きく左右します。承継起業家をひとりにしない。これが私たちの伴走の基本姿勢です。継続的な支援としてGPとの定例会議を週2回設け、業績・KPIの確認と経営課題の意思決定を行います。月次では取締役会相当の経営レビューを実施し、全承継起業家が集まる定期セッションでは経営者同士が本音で課題を共有できる場を作っています。「家族には心配をかけたくないから強がる。でもここでは本音で話せる」という声をいただいています。経営者の孤独を、組織として解消する仕組みです。

AIの活用については、ソーシング・面談・DD・PMI・承継後の数字管理まで、投資プロセスの構造そのものに組み込んでいます。ツールとして使うのではなく、構造に埋め込む。この違いが大きい。DDではAIを活用して調査時間を大幅に短縮しています。ビジネスへの理解が深い経営者目線で見ると一瞬で判断できることも多い。そこにAIを組み合わせることで、精度とスピードを両立できるようになってきました。2024年のファンド立ち上げ時と現在では、AIの活用方法が別物になっています。私たちのGPチームがデジタル会社の創業者であるという素地があってこそ、この速度で進化できていると思っています。

再現性という観点で言えば、プレイブック型投資モデル・AIの一気通貫活用・サーチャーへの徹底した伴走、この3つが揃っているから再現できると確信しています。そしてこの循環を加速させているのが、AIによる高速PDCAです。ソーシング・DD・PMI・承継後の数字管理、それぞれのフェーズで得た知見をAIを使って素早く検証し、プレイブックに反映させていく。実践しながら改善し、改善しながらまた実践する。このサイクルを回し続けることで、投資プロセス全体の効率が上がり、再現性が高まり、5社が20社・50社になってもモニタリングの精度を落とさず運用できる体制が整ってきています。まだ伸びしろだらけですが、この方向性が間違っていないことは、ノーライトオフという実績が証明しています。

承継起業家として、あるいは投資家として、この挑戦に加わりたいと考えている方へメッセージをお願いします。

承継起業家として挑戦を考えている方へ。ゼロから起業することだけが、経営者への道ではありません。すでに実績のある会社の社長として経営を担い、自分の力でその会社をさらに強くしていく。これは「第三の起業の形」として今最も注目されているキャリアの選択肢だと思っています。積み上げてきた業界経験や人脈を、そのまま持ち込める。承継起業家という選択肢を、ぜひ真剣に検討してみてください。

投資家として関わりたいと考えている方へ。事業承継は社会課題であると同時に、投資としても優位性の高い市場です。日本の中小企業の多くは安定したキャッシュフローを持ちながら、デジタル化とAI活用の余地が大きく残っています。後継者問題は今後10年間増え続ける。つまり今はその波の入口に立っているということです。財務リターンと社会課題の解決が一致する、稀有な市場で、私たちは再現性のある手法を1号ファンドで実証しました。

私自身は、この道を「戦って、戦って、戦い尽くす」覚悟で進んでいます。雨が降っても自分のせい。仲間たちと経営を語り合い、真っ白になるまでやり切る。それが経営者として生きるということだと思っています。「中小企業が咲き誇る国へ」というミッションに共鳴してくださる方がいれば、ぜひ一度お話しましょう。

荻原 猛のプロフィール写真
プロフィール

荻原 猛

ロケットスター 代表取締役社長

1973年、栃木県宇都宮市生まれ。大学卒業後に起業するも失敗を経験し、2000年に株式会社オプトへ入社してデジタルマーケティングを学ぶ。2009年にソウルドアウト株式会社を創業し、東証プライム市場への上場を経て、2022年に博報堂DYホールディングスへ譲渡した。自ら会社を創業・上場・売却まで手がけた経営者として、2023年に3度目の起業となる株式会社ロケットスターを設立。後継者不在に悩む中小企業へ、志ある次の経営者と資金をセットで届けるサーチファンドを運営している。

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