インタビュー

上場ゼネコン民事再生の最前線から事業承継支援へ。中道三喜男氏が「後継者育成」にかける情熱|ユニバ―経営サポート

上場ゼネコン民事再生の最前線から事業承継支援へ。中道三喜男氏が「後継者育成」にかける情熱|ユニバ―経営サポート

株式会社ユニバー経営サポート(兵庫県)の代表を務める中道三喜男氏は、行政書士、社会保険労務士、そして経営コンサルタントという3つの顔を持つ支援家です。25歳から53歳までの長きにわたり建設ゼネコンの第一線で働き、一部上場クラスの企業では民事再生という過酷な企業再建の最前線で指揮を執ったという異色の経歴を持っています。

独立後は、企業再建の現場で培った「事業計画作成」のノウハウを武器に、補助金を活用した経営革新のサポートなど、多くの中小企業の支援を行ってきました。そして現在、中道氏がこれまでのキャリアの集大成として最も情熱を注いでいるのが「事業承継」と「後継者育成(後継者塾)」の領域です。

企業の再生と存続の危機を身をもって経験した同氏が、なぜ今、後継者を育成する「後継者塾」の必要性を強く訴えるのでしょうか。そして、事業承継支援というビジネスが直面する集客の壁と、それを乗り越えるための地域密着の戦略とは。兵庫県を拠点に、経営者に寄り添い続ける中道氏にお話を伺いました。

中道様のこれまでのご経歴、そして行政書士事務所を開設されるまでの歩みについてお聞かせください。

うちの事務所は行政書士と社労士、あと経営コンサルタントという形で業務を行っています。もともと私の畑は建設ゼネコンなんですよ。25歳から53歳まで、ずっとゼネコンにいました。最初はハザマ(現・安藤ハザマ)という会社に長くいて、皆さんもご存知の黒部ダム(黒部川第四発電所)を作った会社ですね。その後、そこを辞めて、兵庫県西宮市に本社がある新井組という会社に移りました。当時は一部上場クラスのゼネコンでした。

新井組でキャリアを積み、私が50歳の時に、会社が民事再生手続に入ってしまったんです。その時、私は総務・法務・社長室といった管理部門の次長だったのですが、上の幹部がみんな辞めてしまいました。結果的に、私が実務上のトップとして、5年間にわたり自力再建の指揮を執ることになったのです。

上場クラスのゼネコンの民事再生を実質トップとして指揮されたというのは、凄まじいプレッシャーだったと推察します。

資金繰りが厳しい中で、様々なスキームを駆使してお金の調達をやり続け、なんとか自力再建の道筋をつけるところまで持って行きました。この5年間の日々は、私にとって強烈な原体験となっています。ただ、会社を再建しようとするあまり、やりすぎて社長と意見がぶつかったりすることもありました。エネルギーを極限まで使い果たし、自分自身も少し燃え尽きたような状態になってしまって。それで、5年ほど民事再生の実務をやった後、会社を辞めて行政書士事務所を開業しました。

独立当初から、現在のようなコンサルティング事業を展開されていたのでしょうか。

いえ、当初は長年携わってきた建設業の知識を活かして、建設業許可などの仕事がすぐに来るだろうと考えていました。しかし、現実は甘くなく、仕事が来なくて。これでは行政書士だけでは食べていけないと悟り、社会保険労務士の資格を取得しました。それに加えて、民事再生の過程で会社や社会に向けて事業計画書をずっと書き続けてきたため、事業計画を作成することは得意だったんです。そこで、事業計画の作成と補助金の申請をセットにしたコンサルティング事業を展開するようになりました。

御社のWebサイトには「両利きの経営」という言葉が掲げられています。この言葉に込めた思いについてお伺いできますか。

組織を作り、社内の仕組みを整えて生産性を高めていくことはもちろん重要です。しかしそれと同時に、絶えず新たなビジネスを作り出し、新たなマーケティングを行い、新たな顧客に新たなサービスを展開していく必要があります。この両方をしっかりとやっていかないと、中小企業はいずれ衰退の道を辿ってしまいます。

大きな企業であれば企画部や開発部が分かれて対応できますが、中小企業の場合は「社長自身」が両方をやらなければなりません。そこを考え、実行していく機会を大切にしたいと思っています。ただ、新しいことに挑戦するにはどうしてもお金がかかりますから、そこで補助金の活用が生きてくるのです。

経営革新計画の策定や補助金申請は、その挑戦を後押しするためのツールということですね。

経営革新計画を作ることで自社の未来を考え、補助金を使って新たな事業に取り組んでいく。これまで多くの支援を行ってきましたが、補助金をきっかけにして新たなことに挑戦しようと立ち上がるお客様は一定数いらっしゃいます。そうした企業に対してしっかりと支援を行い、成功をつかんでほしいという思いを持っています。

ご支援をされる中で、事業承継、特に「後継者育成」に向き合うようになったきっかけは何だったのでしょうか。

2021年に事業承継士の講座を受け、その後に「後継者塾養成講座」を受講したのがきっかけです。この講座を受けた時、「これは絶対に世の中に、そしてこの地域に必要だ」と感銘を受けました。自分自身がその仕組みの良さを確信できたこと、そして、これを提供すればお客様にとってプラスになるという手応えを感じたのです。当然、地域にニーズもあるだろうと考えました。

今、私は65歳です。これまでのキャリアの集大成として、世の中の役に立つことをしたいという思いが根底にあります。だから、採算というよりも「これをやり遂げたい」という気持ちで進めてきました。

実際に2025年は、兵庫県で後継者塾を開催されたそうですね。

3年かけて準備をし、昨年初めて6人を集めて、6ヶ月間の合宿も交えた後継者塾を開催しました。従業員が10人、20人と増え、すでに出費の構造や組織の仕組みができあがっている会社において、後継者が何の準備もなくトップに入ってしまうと、失敗するケースが多いんです。私の知り合いや顧問先のなかでも、そうした失敗事例を見てきました。だからこそ、自社を徹底的に分析し、課題を把握した上で、周囲とコミュニケーションを取って事業承継を進めることが不可欠です。

後継者塾の中では、具体的にどのような学びを提供しているのでしょうか。

会社に入って営業をやります、製造をやりますという実務の話と、事業承継をして経営者になるということは別です。事業承継を学ぶということは、経営者の視点に立ち、現社長と一緒に経営課題に取り組む姿勢を身につけることです。後継者塾では、私が目指しているのは後継者に「自社分析レポート」を作ってもらうことです。

自社分析レポートを作ろうと思ったら、後継者は必然的に社長や経営幹部と深く話をしなければなりません。普段は照れや遠慮があって、そういった対話ができていないことが多いのです。しかしレポート作成を通じてコミュニケーションを取り、知らなかった会社の歴史や社長の苦労、感謝の気持ちなどを共有する。そこが重要です。そして、完成したレポートを塾の仲間や社内で発表することで、自分への約束となり、周囲への約束にもなります。そこから初めて、後継者は真剣に事業承継に向き合っていくことができるのです。

後継者塾の必要性が伝わってきます。一方で、事業として展開していく上での課題はありますか。

事業承継支援に対するニーズは間違いなくあります。対象となる企業の数も多く、必要としているという声も確かにある。しかし、それが具体的なビジネス、つまり塾への集客になかなか繋がらないのです。これが不思議なところで、課題だと感じています。

この1年間、セミナーを開催し、後継者向けや先代社長向けの小冊子、パンフレットなど色々なツールを作り、様々な手法で集客を試みました。しかし、売上としては使った金額を少し上回る程度で、投じた労力と資金に見合う結果を得るのは簡単ではありませんでした。事業承継というテーマにおいて、お金をかけてマーケティングで人を集めるのは、少し無理があるのかなと感じています。

中道様は、「兵庫事業承継サポート」という法人も設立されていましたね。その経緯についても教えていただけますか。

実は、最初は事業承継協会の兵庫支部を作ろうとしたんです。ただ、後継者塾をそこでいきなり立ち上げるのは難しいと考えました。なぜなら、マーケティングや集客にお金がかかるからです。そこで、まずは私が「兵庫事業承継サポート」という法人を立ち上げ、そこで事業承継支援と後継者塾を実績としてやりました。それを発展させて、事業承継協会兵庫支部に移行しようと考えたのです。

そして昨年、無事に事業承継協会の兵庫支部が立ち上がり、そこで後継者塾をやるという形ができたので、兵庫事業承継サポートの役割は一旦ここで終わりになります。これからは、立ち上がった事業承継協会兵庫支部の活動をどう活発にしていくかが重要です。

今後はどのような手法で、後継者塾や事業承継支援を展開していくお考えでしょうか。

3つのアプローチを考えています。1つ目は、「事業承継・引継ぎ補助金」やM&Aを活用した支援です。認定支援機関と行政書士の資格が必要な申請業務ですが、私は両方持っているので入りやすい。この補助金を活用する過程で、事業承継計画を作成していくという入り方です。

次に、金融機関などとの地域連携です。これは以前から取り組んでいますが、銀行の支店長会議で後継者塾のプレゼンテーションをさせていただくなど、連携を通じて事業承継に課題を抱える企業へのアプローチを深めていきます。

最後に、「事業承継協会兵庫支部」の活動をもっと活発にすることです。現在は月に1回、幹部で作戦会議を開いています。また、セミナーに参加したものの入塾に至らなかった方や関係者の方々に向けて、兵庫支部としてメルマガで丁寧に情報発信をしていきたいと考えています。協会という看板のもとで発信を続けることで、保険を扱う方や元気の良い専門家が集まってくれば、ビジネスとしても積み上がっていくのではないかと期待しています。

最後に、事業承継支援に取り組む専門家や、悩みを抱える経営者に向けて、メッセージをお願いします。

事業承継支援というのは、粘り強く、少しずつやっていくものだと思います。売り上げがすぐに上がらないからと諦めてしまったり、逆にエネルギーをかけすぎて無理に推し進めようとしたりするのは、少し違う気がしています。発信をし、組織を作り、メルマガや協会の活動など、地道なことを丁寧に積み上げていく。そうした活動の延長線上に、ビジネスチャンスが生まれてくるのではないでしょうか。現在も2社の顧問先に対して、伴走型でずっと事業承継の支援を続けていますが、やはりそうした粘り強い関わりが不可欠です。

事業承継で一番難しく、かつ重要なのは、「後継者を選ぶこと」と「後継者を育てること」です。そこがはっきりしないと、株式移転も何もありません。そこを度外視して、株式移転などのテクニックの話ばかりになってしまっている現状には危機感を覚えます。なんとか後継者塾を広げて、本当の意味での地域の事業承継を進めていきたいと願っています。

中道 三喜男のプロフィール写真
プロフィール

中道 三喜男

株式会社ユニバー経営サポート 代表取締役

25年以上ゼネコン業界に身を置き、ハザマや新井組で活躍。50歳の時に勤務先が民事再生手続に入り、実務上のトップとして5年間にわたり自力再建を指揮した異色の経歴を持つ。退職後、平成27年に行政書士事務所、平成30年に社労士事務所、令和元年に株式会社ユニバー経営サポートを開業。企業再建の最前線で培った事業計画作成のノウハウを活かし、兵庫県を拠点に中小企業の経営革新や補助金活用、事業承継支援、後継者塾の運営に尽力している。

お問い合わせ

事業承継・取材・執筆のご相談など、お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせフォーム