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家業を継ぐか迷ったら|事業承継は後継者が羽ばたくための戦略のひとつ

家業を継ぐか迷ったら|事業承継は後継者が羽ばたくための戦略のひとつ

事業を営む親のもとに生まれた人は、進路選択のどこかで「家業を継ぐか否か」という問題に直面します。この記事では、中小企業庁の調査データをもとに、後継者候補が「継ぎたい」「継ぎたくない」と感じる理由、継ぐ上で身につけたい能力、経営者・後継者が歩み寄るためのポイントを解説します。

この記事でわかること

  • 「家業を継ぐ」ことが、具体的に何を意味するのか
  • 後継者候補が「継ぎたい」「継ぎたくない」と感じる理由の実態
  • 家業を継ぐ上で気をつけたいポイントと、身につけたい能力
  • 継がない場合の選択肢と、迷ったときの相談先

「家業を継ぐ」とはどういうことか?

家業を継ぐとは、親が営む事業の責任者になることです。法人であれば代表取締役、個人事業であれば個人事業主として、経営そのものを引き受けることを意味します。一般にこれを事業承継、より正確には「親族内承継」と呼びます。

新しい分野でゼロから事業を立ち上げる起業とは異なり、既存の事業を引き継ぐ点に事業承継ならではの難しさがあります。自分で立ち上げた事業には熱意を持って取り組めても、引き継いだ事業に同じように心血を注ぐのは簡単ではありません。一方で、承継後に新規事業を立ち上げたり経営革新に取り組んだりして、業績を伸ばす後継者も少なくありません。

家業を継ぎたい人はどんな理由で継ぎたいと思うのか?

中小企業庁は、事業承継に前向きな後継者候補を「積極的後継者候補」、後ろ向きな候補を「消極的後継者候補」と定義しています。積極的後継者候補が事業を継ぎたい・継いでもよいと考える理由で最も多いのは「家業がなくなると困る人がいるから」(31.2%)、次いで「事業に将来性があるから」(30.0%)です。

積極的後継者候補が事業を継ぎたい・継いでもよい理由を示す中小企業白書の棒グラフ。上位は「家業がなくなると困る人がいるから」31.2%、「事業に将来性があるから」30.0%、「自分の家業が魅力的だから」24.4%、「事業の関係者と一緒に働きたいから」22.0%、「やりたい仕事ができるから」19.6%。

通常の就職活動では「その仕事がなくなると困る人がいるから」という理由で会社を選ぶ人はそう多くありません。家業を継ぐ場面でこの理由が最上位に来るのは、後継者候補ならではの視点だといえます。「事業に将来性があるから」という理由も、経営者である親から事業の実情を聞ける立場だからこそ、将来性を具体的に見積もれることの表れでしょう。

家業を継ぎたくない人はどんな理由で迷うのか?

一方、消極的後継者候補が事業を継ぐことに前向きになれない理由で最も多いのは「自身の能力の不足」(57.6%)、次いで「事業の将来性」(40.4%)です。

消極的後継者候補が事業を継ぐことに前向きでない理由を示す中小企業白書の棒グラフ。上位は「自身の能力の不足」57.6%、「事業の将来性」40.4%、「現在の仕事への関心」28.6%、「プライベートとの両立」21.6%、「自分の家族の都合」21.6%。

経営者には転職という概念がなく、従業員とは異なるリスクを抱え続けることになります。だからこそ「事業の将来性」への不安は大きな要因になりやすいのです。「現在の仕事への関心」が高い場合は、無理に家業を継ぐより、社外から後継者を招く第三者承継を検討したほうが、企業・後継者候補の双方にとってよい結果につながることもあります。

なぜ「事業の将来性」への不安は、他の理由より大きいのか?

「事業の将来性」を懸念する人・しない人で理由を比較すると、いずれのグループでも「自身の能力の不足」が最も多く挙げられており(57.4%・57.7%)、将来性への懸念の有無にかかわらず共通する悩みであることがわかります。

事業の将来性への懸念の有無別に、消極的後継者候補が事業を継ぐことに前向きでない理由を比較した中小企業白書の棒グラフ。将来性への懸念がある人・ない人のいずれでも「自身の能力の不足」が57%台で最多となっている。

つまり「自分に経営者としての能力があるか」という不安は、事業の将来性への評価とは切り離して、多くの後継者候補が抱えている悩みだといえます。この不安をどう解消するかが、家業を継ぐかどうかを判断するうえでの共通の課題になります。

順位継ぎたい理由継ぎたくない理由
1位家業がなくなると困る人がいるから(31.2%)自身の能力の不足(57.6%)
2位事業に将来性があるから(30.0%)事業の将来性(40.4%)
3位自分の家業が魅力的だから(24.4%)現在の仕事への関心(28.6%)

家業を継ぐために、どんな能力を身につければよいのか?

経営者がすべての業務をこなせるオールラウンダーである必要はありません。適材適所を見極め、周囲に適切に頼れることが、組織を率いるうえで重要です。実際に事業承継を行った企業では、後継者に対して次のような教育が実施されています。

実施した後継者教育の内容と、そのうち最も有効だった内容を比較した中小企業白書の棒グラフ。実施割合が高いのは「自社事業の技術・ノウハウについて社内で教育」52.7%、「取引先に顔つなぎ」48.6%、「経営について社内で教育」48.2%。有効だった割合も同じ3項目が上位を占める。

実施割合・有効性のいずれでも上位に来るのは、自社事業の技術・ノウハウの教育、取引先への顔つなぎ、経営に関する社内教育です。これらは日々の業務や、経営の経験を積む中で少しずつ身につけていけるものでもあります。「自分には能力が足りない」と最初から諦めるのではなく、社外で経験を積んで自信をつけてから継ぐという選択肢もあります。

なぜ後継者候補の多くは起業にも意欲的なのか?

中小企業庁の調査によると、積極的後継者候補の約8割、消極的後継者候補でも約7割が起業に関心を持っています。これは、いったん起業に挑戦して経営の経験を積んでから家業を継ぐか判断したり、事業承継を果たしたあとに新規事業を始めたいと考えたりする後継者候補が一定数いることを示しています。

経営者である親が子供に尋ねるなら、「家業を継ぐ気はあるか」といきなり聞くよりも、「起業や事業承継を通じて経営者になりたい気持ちはあるか」と尋ね、どんな不安を抱えているのかを丁寧に聞き出すほうが、本音を引き出しやすくなります。

家業を継ぐか迷ったとき、経営者と後継者はどう歩み寄ればよいのか?

経営者と後継者候補が歩み寄り、どのように後継者教育を進めるかをすり合わせることが、スムーズな事業承継につながります。「家業を継ぎたい」と切り出しにくい場合は、商工会議所などが主催する後継者支援を利用するのも一つの方法です。同じ悩みを抱える後継者候補と経験を共有することで、自分に合ったアプローチが見つかることもあります。

家業を継がない選択肢、第三者承継という道は?

「今の仕事に関心があり続けたい」「経営者としてのリスクを負いたくない」という場合、無理に家業を継ぐ必要はありません。社外から後継者を招く第三者承継も、有力な選択肢の一つです。

家業を継がないという判断も、後継者候補にとって前向きな選択肢の一つです。経営者としての適性やタイミングを見極めたうえで、家業を継ぐか、社外でのキャリアを選ぶか、あるいは第三者承継という道を用意するかを、家族で話し合っていくことが大切です。後継者教育の具体的な方法については、事業承継の強いミカタ「後継者塾」とは?メリットや後継者教育について解説でも紹介しています。

まとめ

  • 家業を継ぐとは、既存の事業の経営責任者になることであり、ゼロから始める起業とは異なる難しさがある
  • 継ぎたい理由の最上位は「家業がなくなると困る人がいるから」、継ぎたくない理由の最上位は「自身の能力の不足」である
  • 経営者に完璧なオールラウンド能力は不要で、周囲に頼りながら経験を積むことで身につけられる
  • 後継者候補の多くは起業にも関心があり、経営者になりたい気持ちそのものを親子で確認することが対話の第一歩になる
  • 継がないという選択も前向きな判断であり、第三者承継という道も広がっている

よくある質問

家業を継ぐメリット・デメリットは?
メリットは、すでにある事業基盤・取引先・従業員を引き継げること。デメリットは、既存事業ゆえの慣習や、親と比較されがちな心理的プレッシャーです。ただし承継後に新規事業や経営革新に取り組み、業績を伸ばす後継者も多くいます。
継ぎたくない場合はどうすればいい?
無理に継ぐ必要はありません。社外から後継者を招く第三者承継という選択肢もあり、2019年には国も「第三者承継支援総合パッケージ」を策定してこれを後押ししています。まずは経営者である親と率直に話し合うことが第一歩です。
後継者に向いているかどうかは何で判断すればいい?
経営者に何もかも一人でこなすオールラウンドな能力は必要ありません。適材適所を見極めて周囲に頼れるかどうかが重要です。自信がなければ、社外で経験を積んでから継ぐという道もあります。
家業を継ぐ前に、まず何をすればいい?
親に「継ぐ気はあるか」ではなく「経営者になりたい気持ちはあるか」を率直に話すことから始めましょう。商工会議所の後継者支援や事業承継士など、第三者の力を借りるのも有効です。

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