インタビュー

経験資産を事業承継へつなぐ。第三者承継のヘッドハンター|プロ人材機構

経験資産を事業承継へつなぐ。第三者承継のヘッドハンター|プロ人材機構

株式会社プロ人材機構は、シニア人材や経営経験者が培ってきた知見を、企業の経営課題解決や事業承継の現場へつなぐプロ人材専門の会社です。若手・ミドル層を中心とした転職市場が広がる一方で、50代、60代以降の経営経験者や専門人材が持つ経験は、十分に社会へ流通しているとは言い切れません。

代表取締役社長を務める高橋啓氏は、人材業界に25年携わり、経営層専門のヘッドハンターとして数多くの経営者・幹部人材と向き合ってきました。これまで面談してきた人数は3万人を超えるといいます。その経験から見えてきたのは、事業承継に悩む地方企業と、豊富な経験を持ちながら次の活躍の場を探すプロ人材との間に、まだ十分な接点がないという課題でした。

シニア人材を「年齢を重ねた人」としてではなく、企業課題を解決する経験資産を持つ「プロ」として捉える。高橋氏が考える事業承継とプロ人材の可能性について、お話を伺いました。

まず、高橋さんのご経歴とプロ人材機構について教えてください。

私は人材業界に25年関わってきました。最初は大手人材派遣会社に勤め、その後、前職のプロフェッショナルバンクの創業期から会社の立ち上げに関わりました。

プロフェッショナルバンクでは、主に経営者専門のヘッドハンターとして19年半ほど活動していました。大手企業からベンチャー企業まで、さまざまな会社の経営幹部や経営者にお会いし、社長や経営者クラスの人材をヘッドハンティングする仕事に従事してきました。

現在のプロ人材機構は、シニア専門のヘッドハンティング会社という位置づけで事業を行っています。ただ、シニアを支援する会社というよりも、企業の経営課題を解決できるプロ人材を探していくと、結果として50代、60代の方々に行き着くという感覚です。年齢ではなく、その人が積み重ねてきた経験やノウハウを社会に還元する場をつくりたいと考えています。

事業承継というテーマに関心を持ったきっかけは何だったのでしょうか。

一つは、社会的な要請です。社長のヘッドハンティングをしていく中で、2017年、2018年頃から、事業承継や第三者承継に関する相談が増えてきました。投資ファンドや税理士の先生方から、後継者候補や経営人材を探したいという話をいただくようになったんです。

プロ人材機構に寄せられた事業承継案件 上半期(1月〜6月)合計件数の推移。2024年29件、2025年34件、2026年68件と推移し、2026年は前年の2倍に増加

当時、「事業承継×人材紹介」というテーマは、まだそれほど一般的ではありませんでした。だからこそ面白い領域だと感じ、取り組み始めました。

もう一つは、私自身にとって事業承継が身近なテーマだったことです。妻の父は、トラックの運転手から会社を興し、最終的には上場企業の社外役員まで務めた人物です。私も非常に尊敬していましたが、その会社にも後継者不在の課題がありました。私自身も「継がないか」と言われたことがあります。結果的には断ったのですが、そうした身近な経験もあって、事業承継の問題を自分ごととして捉えていました。

シニア人材と事業承継は、どのような点で相性が良いのでしょうか。

事業承継に悩む企業は、単に営業ができる人、管理ができる人、工場を見られる人を求めているわけではありません。多くの場合、「全部やってほしい」という相談になります。現場を見ながら、経理も理解し、組織も見て、地域との関係性にも配慮できる人材が必要になるんです。

そうなると、一つの専門スキルに特化した人よりも、幅広い経験を持ち、俯瞰して経営を見られる方が求められます。加えて、地方企業の場合は地域に溶け込む力も重要です。現場に入り、従業員や取引先と関係を築きながら進めるには、人柄やホスピタリティも欠かせません。

50代、60代の方々は、良い時も悪い時も経験してきています。修羅場を乗り越えた経験や、失敗から学んだ知恵は、若い世代には簡単に持てないものです。その経験を、事業承継の現場で活かせる余地は非常に大きいと感じています。

マッチングで特に重視していることは何ですか。

一番大事なのは、スキルだけで判断しないことです。たとえば、上場企業の経営者や役員経験者だからといって、必ずしも中小企業の事業承継に合うとは限りません。むしろ、現場も経営も理解している中間管理職の方が、うまくはまる場合もあります。

また、コミュニケーションの相性も重要です。テキストでのやり取りを好むのか、口頭でのやり取りが向いているのか。相手企業の経営者や従業員が、どのようなコミュニケーションをする方なのか。言葉足らずな業界や、阿吽の呼吸で動いてきた会社もあります。そこに外部人材が入るわけですから、人と企業の相性を丁寧に見極める必要があります。

もう一つ重視しているのは、マチュアであるかどうかです。会社や事業を任せられる人は、人間として自立していなければなりません。誰かに指示されなければ動けないのではなく、自分の目で課題を発見し、どう改善するかを考え、実行できる人であること。その見極めでは、成功体験よりも、失敗にどう向き合ってきたかを大切にしています。

事業承継における「成功」は、どう捉えるべきだと思いますか。

事業承継は、今この瞬間の評価だけで判断すべきものではありません。中途採用で入ったマネージャーが1年で利益を上げたかどうか、という評価とは時間軸が違います。

事業承継は、50年続いた会社を100年、150年、200年へつなげていく営みです。たとえ引き継いだ後の10年間で売上が落ちたとしても、従業員が守られ、サービスが続き、地域に必要とされる会社として50年後も生き続けているのであれば、それは大成功の承継だと思います。

承継とは、文化を守り、製品を守り、社員を守っていくことです。短期の数字だけでなく、長い時間軸で見なければならない。だからこそ、良い時も悪い時も経験してきたプロ人材の知見が活きるのだと思います。

今後、どのような取り組みを進めていきたいですか。

私たちが20年以上見聞きしてきたものを、きちんと形にして後の世代へつなげていきたいと考えています。後継者として活躍してきた人も見てきましたし、残念ながらうまくいかなかった人も見てきました。その経験から得たノウハウを活かし、後継者の意識変容や行動変容を促す教育事業、入社後の活躍を支えるオンボーディング支援などを展開していきたいです。

また、フルタイムの経営者紹介だけでなく、ノンフルタイムの支援にも可能性を感じています。たとえば、地方企業では経理人材が採用できないという課題があります。首都圏にいる元CFO経験者が週1回支援し、現場のオペレーションは地域の人材が担い、さらにAIによる業務効率化を組み合わせる。そうした形で、これまで採用できなかったポジションを補うこともできます。

経験豊富なプロ人材、地域の人材、テクノロジーを組み合わせることで、地方企業の経営課題を解決する事例を増やしていきたいですね。

経営に挑戦したい方へ、メッセージをお願いします。

経営者を目指したい、あるいは経営を引き継ぎたいという気持ちは素晴らしいことです。一歩を踏み出すのは簡単ではありませんし、周囲のサポートも必要です。ただ、私は3万人を超える方々の転身に立ち会ってきた経験から、経営者になるべき人は、地位や会社の規模で決まるのではなく、どれだけ修羅場を乗り越えてきたかで決まると思っています。

その修羅場を乗り越える過程では、上司、同僚、後輩、家族など、さまざまな人の支えがあったはずです。だからこそ、そこで得た経験を自分だけで消費して終わらせるのではなく、次の世代や社会へ還元してほしい。

経験は、自分のためだけのものではありません。誰かに渡してこそ、本当の意味で恩返しになる。そう考えています。自分の経験を社会に活かしたい方には、ぜひ一歩踏み出していただきたいです。

インタビューに答える株式会社プロ人材機構 代表取締役社長の高橋啓さん

高橋 啓のプロフィール写真
プロフィール

高橋 啓 Takahashi Akira

株式会社プロ人材機構 代表取締役社長

人材業界に25年携わり、経営層専門のヘッドハンターとして、これまで3万人を超える経営者・幹部人材と向き合ってきた。前職ではプロフェッショナルバンクの創業期から立ち上げに参画し、経営者や後継者候補の採用支援に従事。現在は、50代・60代を中心とした経験豊富なプロ人材の知見を、地方企業の経営課題解決や事業承継へつなぐ取り組みを進めている。

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