インタビュー

会社員・コンサル・地域活動の三足のわらじ。実家のラーメン店承継に挑む実践的支援とは|ARNOL

会社員・コンサル・地域活動の三足のわらじ。実家のラーメン店承継に挑む実践的支援とは|ARNOL

働き方の多様化が進む現代において、複数の草鞋(わらじ)を履きこなし、それぞれの領域でシナジーを生み出すビジネスパーソンが増えています。株式会社ARNOLの代表を務める内藤朗人氏も、その一人です。

内藤氏は、電子部品メーカーで新規事業開発を担う「会社員」としての顔を持つ一方で、中小企業診断士および事業承継士として他業種の経営支援を行う「コンサルタント」、さらには地元・滋賀県守山市で非営利の「地域活動」に取り組むという、ご自身が「三足のわらじ」と呼ぶ独自のスタイルで活動しています。

特筆すべきは、コンサルタントとして培った事業承継のノウハウを、ご自身のお父様が営む愛知県のラーメン店「知立(ちりゅう)ラーメン」の承継問題に直接適用し、実証実験のように実践している点です。親族内での「家族会議」の進め方から、M&Aプラットフォームを活用した第三者承継の模索まで、支援家であり当事者でもある内藤氏だからこそ語れる「事業承継のリアル」があります。

なぜ事業承継支援を「伴走型支援の究極の姿」と語るのか。そして、77歳のお父様の店をどのように次世代へ残そうとしているのか。京都・滋賀エリアで精力的に活動する内藤氏にお話を伺いました。

中小企業診断士の資格を取得された背景や、現在の活動スタイルについてお聞かせください。

私は現在、電子部品の製造業で会社員として働きながら、副業として中小企業診断士の活動を行っています。中小企業診断士の資格を取ったのは5、6年前のことです。当時、会社員としてずっと新規事業に携わっており、2012年から5年ほどアメリカに駐在して立ち上げた事業を、日本でさらに展開していくタイミングでした。その中で、「しっかりと経営の勉強をしておこう」と思い立ったのが資格取得のきっかけです。

昨年、株式会社ARNOLという法人を立ち上げ、そこに父のラーメン事業を組み込むような形で活動を本格化させました。

「ARNOL(アーノル)」という社名には、どのような由来があるのでしょうか。

  アメリカ駐在時代、当時の上司が私につけたニックネームが「アーノルド」だったんです。私自身その呼び名をいたく気に入っておりまして、法人化する際にそこから名前を取りました。「アーノルド」ではすでに他社の登録があったため、「ド」を取って「アーノル」にしました。

現在のコンサルティング活動では、どのような業界の支援をされているのでしょうか。

会社員としての本業が電子部品業界ですので、コンサルティングにおいては本業に極力関わらない領域を選んでいます。具体的には、エレクトロニクスから外れた飲食業、美容業、運送業、食品の製造業や小売業などの支援が主ですね。父がラーメン店をやっていることもあり、そうした分野に関わることが多いです。

私は自分の現在の活動スタイルを「三足のわらじ」と呼んでいます。一足目が「会社員」、二足目が中小企業診断士としての「収益事業」、そして三足目が「地域活動(非収益事業)」です。現在住んでいる滋賀県守山市で、商工会議所と連携した「創業応援マルシェ」を企画したり、「守山のアーノルド博士」として子ども向けのホタル保全活動を行ったりと、まちづくり関連の取り組みも並行して行っています。

中小企業診断士として活動をされる中で、事業承継士の資格を取得された背景には、どのような思いがありましたか。

中小企業診断士として5、6年活動し、顧問契約を結ぶお客様も増えていく中で、自分のコンサルティングのスタイルが明確になってきました。私は、スポットでの関わりよりも、3年、5年と長くお付き合いをして、その中で様々な支援をしていく伴走型のスタイルを理想としています。

その視点で考えたとき、現行の社長から次の社長へとバトンが渡り、その後も継続してサポートしていける「事業承継」というフェーズは、ある種「究極の姿」だと感じたのです。その理想を実現し、より深い支援を行うためには、承継について専門的に学ぶべきだと考え、事業承継士のセミナーを受講しました。

資格取得後、なぜ父親のラーメン事業を法人に組み込むことにしたのですか。

事業承継の案件というのは、待っていてもなかなかすぐにあるものではありません。それならば、まずは自らの家族内で実験的にやってみようと考えたのです。

私の父は愛知県知立市で「知立ラーメン」という店を個人事業として営んでいます。個人事業ですので、株式の相続という概念はありません。しかし、事業とそれに紐づく不動産があるため、将来的に兄弟間で「争族(相続争い)」にならないよう、事前の話し合いが不可欠でした。

具体的にはどのようにプロセスを進められたのでしょうか。

セミナーで学んだコンセプトやテクニックを活かし、「家族会議」の場を設けました。基本的には非常に仲の良い家族なのですが、だからこそ」なあなあ」にせず、しっかりと説明を尽くすことを心がけました。

具体的には、父が所有する不動産もラーメン事業も、一旦すべて長男である私が法人として引き受けます。その上で、店を手伝ってくれている妹たちを含め、役員報酬という形で利益を分配する仕組みを提案しました。なるべく公平・フェアになるよう、自ら作成した事業計画の資料を示し、家族内で円満に合意ができるよう論理的に準備をして臨みました。これはまさに、事業承継士としての学びが直接役に立った部分です。

現在の「知立ラーメン」の経営状況や、今後の展望についてお聞かせください。

父は現在77歳で、妹と共に現場に立って現役で店を回してくれています。厚切りの煮豚が乗ったラーメンが看板メニューです。

ただ、年齢的なこともあり、現在は昼しか営業できておらず、収益状況としては芳しくありません。当面の課題は、この限られたアセットの中で、いかにして店舗の収益を立て直し、黒字化への道筋をつけるかということです。

第三者への承継(M&A)なども視野に入れられているのでしょうか。

はい。実は昨年から、事業承継マッチングプラットフォームの「バトンズ」に登録し、ラーメン店を継いでくれる方を募集しています。現在は店舗の立て直しを図りつつ、引き続き承継先を探しているという状況です。

77歳で現場に立たれ続けているお父様は、非常にバイタリティに溢れた方ですね。

父は本当に鉄人で、ネタには事欠きません。75歳を超えても現役で働きながら、趣味でボルダリングを長く続けています。つい数ヶ月前にも、ボルダリング中に手を滑らせて落下し、救急車で運ばれて2、3日入院したんです。家族はヒヤッとしましたが、なんと翌週にはもう店を開けて営業を再開していました(笑)。この父のバイタリティがあるうちに、なんとか良い形で事業のバトンを繋ぎたいと思っています。

最後に、内藤様が所属されている事業承継協会の「京都・滋賀支部」の活動について教えてください。

京都・滋賀支部は、昨年立ち上がったばかりの非常にフレッシュで売り出し中の支部です。現在、新メンバーを大募集しており、毎月盛んに勉強会などを開催しています。

事業承継協会 京都滋賀支部

事業承継は一人の専門家だけで完結できるものではありません。京都・滋賀エリアで事業承継に関心のある専門家の方々には、ぜひ私たちの支部の活動に参加していただき、ともに学び、地域の企業を支援するネットワークを広げていきたいと願っています。

内藤 朗人のプロフィール写真
プロフィール

内藤 朗人

株式会社ARNOL 代表

会社員でありながら、中小企業診断士および事業承継士の活動を行っている。さらに、地元である滋賀県守山市にて「アーノルド博士」として地域活動にも取り組んでいる。2012年から約5年間の米国駐在を経て経営の勉強を志し、資格を取得した。現在は自ら法人を設立し、愛知県知立市で実父が営む「知立ラーメン」の事業承継と立て直しに当事者として挑む傍ら、事業承継協会の京都・滋賀支部でも精力的に活動している。

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