事業承継は一人で抱え込まない。西村隆志氏が兵庫の地で築く、専門家ネットワークの力|西村隆志法律事務所
西村隆志法律事務所(大阪府)の代表を務める西村隆志氏は、平成19年に弁護士登録を行い、関西圏を中心に数多くの企業法務や法律相談に向き合ってきた気鋭の弁護士です。令和2年には税理士登録も行い、現在は4名の体制で事務所を運営しながら、主軸である弁護士業務に邁進しています。
そんな西村氏の活動の中で特筆すべきは、事業承継支援における組織的ネットワークの構築です。「事業承継協会」において、大阪支部の立ち上げに尽力した後、さらに兵庫支部をも立ち上げるという、異例の「2支部設立」を果たした人物でもあります。
なぜ、一人の弁護士が事業承継という分野にそこまで深く関わり、地域をまたいで専門家のネットワーク構築に奔走するのでしょうか。そこには、弁護士という実務家ならではの視点で見つめた「中小企業の世代交代のリアル」と、一人の専門家では決して解決できない事業承継の複雑さへの深い理解がありました。
同世代の経営者が直面する承継の課題から、広大な「兵庫県」をカバーするための新たな組織づくり、そして弁護士交代のタイミングに潜む社内体制見直しの重要性まで。関西の事業承継支援を牽引する西村氏にお話を伺いました。
弁護士としてご活躍される中で、事業承継に関心を持たれた背景にはどのようなことがあったのでしょうか。
私が弁護士として仕事をして数年経った頃、年齢的にちょうど私と同年代の「会社の経営者のご子息」たちが、事業承継をして会社を引き継ぐタイミングを迎えるようになってきたのです。その世代交代の過程を間近で見る機会が増えました。
社長が代替わりをするタイミングでは、「顧問弁護士の交代」というのもよく起こるのです。先代社長が付き合っていた顧問弁護士の先生は、やはりかなりご高齢になられているケースが多い。そのため、新しい若い社長に代替わりするタイミングで、顧問弁護士や税理士、弁理士といったパートナーの士業も一新されることが多々あります。
経営陣の若返りに伴って、外部の専門家チームも若返りを図るというわけですね。
そうなんです。その専門家が交代していく過程や、事業承継が行われるプロセスを実際に目の当たりにして、私自身「事業承継そのものをもっと深く勉強したい」と考えるようになりました。そこでインターネットで色々と検索をしていたところ、「事業承継士」という資格があることを知り、講座を受講し始めたというのが最初のきっかけです。
関西圏では事業承継協会の活動が活発だと伺っています。西村様はどのようにして資格を取得し、ネットワークを広げていかれたのでしょうか。
私が事業承継士の講座を受けた当時は、まだ大阪の会場というものが存在しなかったんです。ですので、東京タワーの近くにあった会場まで行って講座を受けました。その講座が終わる頃、事業承継協会の方から「大阪支部を作りませんか?」というお声がけをいただいたのです。
ちょうどその時の受講生の中に、大阪近辺や、少し離れた広島の方などを含めて5人ほどの関西圏のメンバーがいました。そこで事業承継士を取得した後、そのメンバーで集まって「じゃあ大阪支部というものを立ち上げようか」ということになり、資格を取得した年の秋頃に大阪支部を立ち上げました。
大阪支部を令和元年に立ち上げて、丸6年ほど経った頃、私は大阪支部の方からは少し離れまして、昨年の秋に、今度は兵庫支部の立ち上げを行いました。
兵庫支部を立ち上げるに至った経緯には、どのような背景があったのでしょうか。
大阪と兵庫は近そうなイメージを持たれがちですが、大阪から近い兵庫というのは本当にごく一部なんです。兵庫県はとても広く、人によっては「ヒョーゴスラビア」と呼ぶくらい、文化も風土も違う国が5つぐらい集まっているような地域なのです。
北の方の日本海側である豊岡や、西は姫路など、様々な地域から事業承継の相談や後継者塾への参加者が来られます。大阪支部だけでは、そうした広大な兵庫県の全域をカバーすることは難しい。だからこそ、兵庫支部という拠点をしっかりと作る必要があったのです。
兵庫支部の会員を増やしていくことにも注力されていると伺いました。
はい、会員はどんどん増やしていきたいと考えています。事業承継や事業承継士の活動で非常に面白いのは、一人の専門家だけで全部をカバーするのは難しい領域だということです。だからこそ、様々なバックボーンを持った人たちが集まることで、非常に面白いことができます。
弁護士や税理士といった士業だけでなく、ということでしょうか。
おっしゃる通りです。例えば、エンジニアの方や、業務改善(管理会計など)が得意な方が入ってこられると、その人の得意分野を生かすことで会社が劇的に良くなるケースがあります。多様な専門家が部分的に関わることで、事業承継に良い効果が生まれると確信しています。
事業承継という領域において、弁護士としてどのような支援を強化していきたいとお考えですか。
事業承継における弁護士の役割というと、遺言書を書くといった形での関与をイメージされる方が多いかもしれません。しかし実務的には、それだけではありません。先ほど申し上げたように、事業承継のタイミングでは顧問弁護士が交代することがよくあります。実はこのタイミングこそが、企業の内部体制を見直す絶好の機会なのです。
具体的にはどのような見直しを行うのでしょうか。
社内規程の整備や、社内の業務フローの再確認、そしてこれまでに結んできた契約書に不備がないかどうかを一から確認します。先代の時代からあるルールや、時代に合わなくなった契約関係を、新しい社長と新しい顧問弁護士の目線で確認していく。このプロセスは、会社が新体制でスムーズに事業を継続していく上で非常に重要であり、私たち弁護士が大きく貢献できる部分だと考えています。
事業承継そのものへの関与と同時に、代替わりのタイミングを利用して社内規定やフローを再確認する。このあたりは、弁護士としてかなり手厚くお手伝いができる領域だと思っています。
西村様はこれまで、事業承継や税務・相続に関する書籍を多数出版されていますね。
本の出版については主に2つのパターンがあります。一つは事務所内の弁護士だけで作った本。もう一つは、私が所属している別の弁護士が主催する勉強会で作った本です。この勉強会には弁護士以外にも税理士や不動産鑑定士など他の士業の方も参加しており、地代家賃の問題や事業承継など、テーマを決めて議論し、その内容を踏まえて本を出していました。
ご自身の著書の中で、事業承継に特化したものもあるのでしょうか。
2014年に出版した『Q&A 中小企業事業承継のすべて』という本があります。これは事業承継がメインのテーマで、分担執筆で参加しました。ちょうど「経営承継円滑化法」が出始めた頃だったと記憶しています。
Q&A 中小企業事業承継のすべて
今ほど「事業承継」というものが社会に認知されていなかった時代でした。私自身、「事業継承ではなく事業承継なんですよ」とよく説明していたことを思い出します。当時から比べると、事業承継に対する社会の意識はずいぶんと変わりましたね。
今後の兵庫支部としての活動や、読者に向けてPRしたいことがあればお願いします。
兵庫支部としては、やはり「後継者塾」を強く推していきたいですね。東京にはもちろん充実したノウハウがありますが、それと同等に価値のある学びがこの兵庫でも受けられるということを、しっかりと伝えていきたいです。事業承継は一人で抱え込んで解決できるものではありません。多様な専門家が連携し、企業の課題に応じたチームでサポートしていく体制を、これからも広げていきたいと思っています。
西村 隆志
平成19年12月に弁護士登録。令和2年に税理士登録も行う。事業承継士の資格を取得後、令和元年に事業承継協会 大阪支部を立ち上げ、約6年にわたり運営に尽力した。その後、令和7年秋に兵庫支部の立ち上げにも参画し、支部長に就任するという異例の経歴を持つ。他士業との連携を重視し、弁護士の視点から代替わり時の社内体制構築や契約書レビューなど、実務的な事業承継支援を推進している。共著に『Q&A 中小企業事業承継のすべて』など多数。


