インタビュー

大手デベロッパー出身の事業承継士が語る!専門家を束ねて事業承継の「全体最適化」を図る手法とは|バトン・コンサルティング

大手デベロッパー出身の事業承継士が語る!専門家を束ねて事業承継の「全体最適化」を図る手法とは|バトン・コンサルティング

事業承継は、単に「経営のバトン」を次の世代に渡すことではありません。

自社株の移転に伴う税務や財務上の問題、相続等に関する家族間の調整、従業員・取引先や金融機関等のステークホルダーとの調整 後継者選びとその育成――。利害関係者が複雑に絡み合う中で、どの順番で、誰に、何を、どこまで引き継ぐのかを整理していく、極めて実務的でセンシティブな経営課題です。

今回お話を伺ったのは、バトン・コンサルティング株式会社の村上智史様。

村上様は、長年不動産業界の第一線でキャリアを積んだ後に、マンション管理組合を対象としたコンサルティング会社(株式会社マンション管理見直し本舗)を起業し、管理組合の財政健全化や運営の適正化の支援に尽力されています。

そして、昨年新たな活躍のフィールドを求めて、まだ日本には少ない「中小企業の事業承継に特化したコンサル会社」としてバトン・コンサルティングを設立されました。

村上様のお話で印象的だったのは、「自分一人で各専門家の領域をすべてカバーする必要はない」という考え方です。

必要なのは、経営者に寄り添いながら、事業承継に際して浮かび上がってくる様々な課題の論点を整理したうえで、それぞれの解決のために最適と思われる専門家チームを編成し、全体最適を図る役割ということ。いわば、事業承継における「アカウント・マネージャー」のような存在です。

今回は、村上様がどのような経緯で現在の仕事にたどり着いたのか、そしてこれからどのような事業承継支援を実現していきたいのかについて、じっくりお話を伺いました。

まずはこれまでのご経歴から教えてください。

大学卒業後、大手デベロッパーに入社したのですが、時代はちょうど「バブル経済の胎動期」で、地価の急上昇に悩む地主さんに対して相続税対策の一環で土地の有効活用を提案する部署に配属されました。

地価の上昇はデベロッパーにとっても「仕入原価の増加」を意味しているため、事業の採算が取りにくくなっていました。そのため、経営トップから「もっと知恵を使って仕事しろ」というミッションが降っていたのです。

その中で、当時新入社員としてかなり突っ込んで勉強したのが、土地活用による相続税の節税と地主さんの安定収益の確保という課題を達成するためのコンサルティング営業でした。

まず、地主さんが所有する不動産を時価評価して、どのくらいの相続税がかかるのかを含めてリスクを定量的に試算します。それをもとに、ご所有地に賃貸ビルやマンションを建てることによって、どれくらい節税が可能か、またそこから得られる賃貸収益で借入金を返済しながら老後も安心して生活できるのかを検討するのです。

こうしたケーススタディや企画提案を繰り返すことで、不動産の買換えや売却時の税額控除といった税務上の特例措置や、不動産賃貸事業による減価償却効果などの会計収支の見方について知見を深めることができました。

地主向けのコンサルティング営業を経験した後は、オフィスビルのテナント営業のほか、ビル事業を統括する部門で本部全体の財務状況や中期的な事業収支の見通しを取りまとめたり、部門ミッションの達成度合いをライン側にいる社員に説明する仕事も任されました。その結果、徐々に「計数管理」や「読み手にとって分かりやすい資料の作成」といった仕事が自分の得意分野に感じられるまでに鍛えられました。

その後、現在のJ-REIT(不動産投資信託)の立ち上げやプロパティマネジメント会社への出向等を通じて多様な仕事を経験し、26年間の会社員生活を終えました。

振り返ってみると、サラリーマン時代を通じて身につけることのできた私の「強み」は、大きく2つあると思っています。一つは、不動産の運用による収益、つまりおカネの流れが会計・税務的な観点からオーナーにどのような影響を及ぼすかを把握できる「計数管理力」。そして、オーナー等が抱える様々な課題や要望に応えるためにどんなソリューションがあるかを複数案提示するための「企画提案力」です。

こうした過去のキャリアで得られた経験、スキルや知見は、「複眼的な視点」や「全体最適」が求められる事業承継のコンサルティングにも大いに役立つのではないかと思っています。

その後、独立されてマンション管理士としてコンサルティング会社をスタートされたわけですが、どのようなきっかけがあったのでしょうか。

きっかけは、自宅のマンションです。当時新築で購入したマンションに住み始めた後に、アフターサービスや管理の面でいろいろと問題が発生していたのです。当初は管理組合の運営に対してまったく興味がなかったのですが、「自分の資産を守るためにも業界人の自分がやるしかない」と考えて、築2年目に管理組合の理事長に立候補して選任されました。

当時は不動産業界にいたため、デベロッパーの思惑や、管理会社のビジネスモデルについてもある程度の知識は持っていました。ただ、それまでのキャリアからもお分かりの通り、マンション管理については素人同然でしたので、一から勉強して業界関係者からのヒアリングや管理規約の熟読から始まり、管理コストの見直しのための管理会社との交渉や管理会社の変更、大規模修繕工事のための設計コンサルタントの選定や施工業者からの相見積もりの取得などに携わりながら、新築から13年の間に都合8年くらい理事長を務め、徐々にその知見を深めていきました。

その結果、管理を抜本的に見直すことで大幅にコスト削減ができるうえに、そこで生まれた剰余金を修繕積立金会計に振り替えることによって管理組合の財政も健全化できることを実感できました。率直に言って「こんな普通のマンションでもこれだけ変わるのだから、これはビジネスにできるだろうな」と思いました。

ただ、当時はまだコンサルタントとして独立起業するという発想はありませんでした。自宅のローンもかなり残っていましたし、育ち盛りの子どもたちを抱えてサラリーマンとしての安定収入を捨てるまでの勇気はとてもありませんでした。

ただ、その理事長としての経験が独立起業につながるのですね。

はい。40代後半になった頃からサラリーマンとしての将来を考えた時に「このまま会社にいてもやりたい仕事ができそうにないし、定年になってから起業するエネルギーが残っているかわからない。」と考え始めました。

そんな時、ちょうどタイミング良く、会社側に転身支援のための早期退職優遇制度ができたことも、悩める私の背中を押してくれました。

そして「挑戦してやるだけやってみよう」と一念発起し、起業塾に半年間通ってビジネスプランを練り上げるとともに、必要不可欠な国家ライセンスとして「マンション管理士」の取得を機に「マンション管理見直し本舗」を起業して2013年に独立しました。

もちろん最初から順風満帆というわけではありませんでした。一番苦労したのは、「集客」です。無関心な区分所有者が多い管理組合の役員は「輪番制」になっていることが多く、代表者である理事長が毎年のように交代するため、ダイレクトメール等を使ったプッシュ型のマーケティングは通用しないと考えました。

そのため、マイノリティーであっても日頃から問題意識を持っている区分所有者から問い合わせをもらえるよう、SEO対策を講じた会社のサイトページを立ち上げつつ、管理組合に役立つ記事をブログで発信する、またサイトにアクセスしてくれたユーザーを対象にセミナーを定期的に開催するなど、プル型のマーケティング活動に注力することにしました。

最初の1年目はほとんど仕事がありませんでした。2年目から少しずつですが案件が増え、5年目くらいで「これならやっていける」という確信が持てるようになりました。その間は、まさに「山あり、谷あり」。もちろん良いことも多いのですが、泥水を飲むような厳しい経験もしてきました。

今では起業から13年が経ち、お陰様で安定して収益を確保できる事業になりました。

マンション管理士としてのビジネスの基盤を築かれた一方で、なぜ事業承継の支援にも取り組むことにしたのですか。

実は私、サラリーマン時代に自己啓発の一環で「中小企業診断士」の資格を20代で取得していました。ただ、当時士業との兼業はNGでしたし、年齢的にもまだ独立する気がさらさらなかったので、その資格を活用するには至りませんでした。その後資格の更新だけは続けていましたが、マンション管理士で生業にするようになったため、更新を止め、現在は登録していません。

ところが、近年、後継者不足による中小企業の廃業が大きな社会課題になっていることを知りました。私も零細会社とはいえ「経営者の端くれ」です。事業承継の問題は決して他人事ではないと感じたのです。

また、サラリーマン時代の地主さんの相続対策などのコンサル経験や、マンション管理士としての管理組合の運営や組合内の合意形成、財務会計の見直しなどに携わってきた経験は、中小企業の事業承継という分野にも活かせるのではないかと思いました。

そこで、まずは自分の適性を判断すべく、金融財政事情研究会の資格「事業承継・M&Aエキスパート」の取得のための通信教育を受講しました。実際に基礎を学んでみると、税務や会計の論点も含めて、自分のこれまでの経験とも関連する部分が多いことがわかりました。

その後、事業承継協会が認定する「事業承継士」の資格があることを知り、資格取得講座を受講した後、認定試験に合格して取得しました。ただ、他の士業と同じですが、資格を取ったからと言って仕事にありつけるほど甘い世界ではありません。

どうやってクライアントや潜在顧客と「接点」を持つことができるか。それがあらゆる起業に共通する最も重要かつ困難なテーマです。私は「マンション管理見直し本舗」での経験を踏まえて、まずは会社の設立と同時に当社の概要や業務内容のわかるサイトページを立ち上げるとともに、代表としてブログを発信することにしました。

事業承継士|村上智史の「士魂商才」 - はてなブログ

「バトン・コンサルティング」の強みは、どこにあるのでしょうか。

現時点では、専業として事業承継を体系的に支援しているプレイヤーはかなり少なく、税理士や中小企業診断士が副業的に扱っているケースが主流かと思われます。

こうした状況は、相談する立場からすれば非常に心許ないのではないでしょうか。なぜなら専門家の最大の弱点は、「専門分野のこと以外の知見については未知数」だからです。

一方、事業承継は、税務、法務、会社経営、不動産、相続問題、金融など幅広い分野にまたがる難問です。複合的に絡み合う課題を客観的に俯瞰しながら、「全体最適」につながるソリューションを検討する必要があります。また、経営者の意向によってベストな選択も都度変わってくるので、サポートする側としては常に複数のソリューションを用意しておく必要があります。

しかしながら、分野の専門家に任せると、それぞれの得意分野の知見や商業的な動機がかえって災いして「部分的最適」に陥るリスクがあります。クライアントである経営者側からすると、提案された選択肢が本当にベストなのか確信を持てないケースも出てくるでしょう。

そのため、当社の場合は、まずクライアントが事業承継の際に抱えている課題を分析・整理したうえで、その課題に沿った「専門家チーム」を編成します。そして、常に複眼的な視点から課題を検討し、「全体最適」を実現するためのソリューションを導き出すことを目指します。

その中での私の役割は、チームのリーダーとして、専門家チームの成果物をクライアントの立場でチェックし、経営者の意向に沿ったバランスの取れたソリューションになっているかを確認することです。

言ってみれば、クライアントにとって当社の「アカウント・マネージャー」(特定の顧客に対して、自社のあらゆるリソースを動員して最大の価値を提供し、長期的な信頼関係を築く責任者)の役割を担うということです。

「経営者に寄り添いながら、専門家にバラバラに相談すると部分最適に陥りがちなリスクを取り除き、全体最適を実現する統括力」が当社の最大の強みであると考えています。

「バトン・コンサルティング」という社名には、どのような意味が込められているのでしょうか。

「事業承継に特化したコンサル会社」を簡潔に表現できる社名はこれしかないかと思って決めました(笑)。事業承継は、後継者に「経営のバトン」を渡すことですからね。

当社のロゴマークは、プロのデザイナーに依頼しました。ロゴにはサイズの異なる球体が2つ並んでいますが、これは「月」と「地球」の関係性を用いたモチーフで「繋がり」や「寄り添う」を表現したデザインになっています。 地球の自転は、月の引力のおかげで、適度な速度に保たれています。

つまり、「月」が「地球」に寄り添いながら、絶妙なバランスを保っているという関係性を、当社とクライアントの関係になぞらえています。

寄り添いながら、距離を見誤らず、相手のバランスを崩さないよう支えていく。それは、私たちの目指すスタンスそのものです。

サイトページにある「事業承継リスク診断」にはどんな狙いがありますか。

一番の狙いは、事業承継を「**いま考えるべきテーマ」**として気づいてもらうことにあります。事業承継は、急にやろうと思ってできることではありません。考え始めてから、実際に計画し、実行に移すまでには、少なくとも3年から5年単位で準備が必要だと思います。

だから、「すぐ相談しよう」というアクションに繋がることは期待していないんです。まずはブログやホームページを見て、「ウチもそろそろ考えなきゃいけないな」と思ってもらう。そのきっかけを作ることが重要だと考えています。

まずはお気軽にご相談ください。

3分でわかる!事業承継リスク診断

サイトページの「事業承継リスク診断」は、「ご相談のきっかけ作り」のために設けました。現状について正直にチェックしてもらうことで、自分の会社の状況を客観的に知ることができるでしょう。

診断結果は、単に点数でリスク評価しているだけでなく、リスク度合いに応じて具体的に何に取り組むべきかといったアドバイスもお伝えしています。

リスク診断に参加いただいた方には、当社から事業承継に役立つ情報やセミナーのお知らせなどを定期的にお届けする予定です。

実際の支援はどのような流れで進んでいくのでしょうか。

まず初回の相談は無料でお受けしています。その後、有償のコンサルティング契約を締結いただき、大きく2つのメニューをご用意しています。

① 事業承継診断プログラム ② 事業承継実践プログラム 上記①のプログラムでは、下図のStep1からStep3の業務を対象としています。

会社の財務状況、株主構成、家族構成、後継者候補の有無、経営者個人の資産状況など、事業承継を進めるうえで必要な基本情報を整理したうえで、事業価値の分析、課題の洗い出し、事業承継計画案の作成までを行います。

私は、まずこの「情報の整理・分析」と「計画案の作成」が非常に重要だと思っています。いきなり実行段階に入るのではなく、何を、いつ、誰が、どの順番でやるのかを明確にする。ここが曖昧なまま進めると、途中で必ず混乱します。

これに続く上記②の実践プログラムでは、下図のStep4からStep8の業務を対象としています。

事業承継を計画に沿って進め、都度進捗管理をしながら計画をメンテナンスしてきます。経営体制の見直し、自社株など各種資産の承継、後継者育成、権限移譲、各種資産の承継準備、関係者への説明など、テーマごとに必要な支援を進めていきます。

もちろん、クライアントや抱えている課題ごとに専門家の編成は変わります。税理士、弁護士、中小企業診断士、公認会計士など、課題に応じて最適と思われるメンバーでチームを編成して対応していくイメージです。また、最初からチームメンバーが固定されるのではなく、進捗フェーズごとの課題に応じてメンバーの組み替えも想定しています。

貴社は中小企業庁の「M&A支援機関」に登録されていますが、M&Aの仲介を積極的に行っていく予定なのでしょうか?

いいえ。当社は「M&Aの仲介(マッチング)」事業をメインにすることは今のところ考えていません。

ただ、M&A支援機関に登録することで、クライアントが事業承継に関わる「補助金」を申請しやすくなったり、当社自身のクレジット(社会的信用)を高めてくれるといったメリットがあります。

あくまでお客様の選択肢を広げ、有利にプロジェクトを進めるための「手段」として登録しています。

最後に、今後どのような企業や経営者を支援していきたいか、メッセージも含めてお願いします。

事業承継について「そろそろ考えなくてはいけないとは思っているけれど、何から手をつければいいかわからない」という経営者さんには、まず最初の一歩を早めに踏み出していただきたいです。

事業承継は、ついつい先延ばしされやすいテーマです。目の前の経営に忙しいし、自分自身はまだまだ元気だから時期尚早と思いがちです。でも、実際には、後継者の育成にも、株式や資産の整理にも、社内外への説明にも「一定の時間」がかかります。だからこそ、「まだ早い」のではなく、「いまから少しずつ計画的に準備する」のが大切なのです。

私は、経営者の方に寄り添いながら、その会社に合った承継の道筋を一緒に描いていきたいと思っています。すべてを一人で抱える必要はありません。必要な専門家はその都度組めばいい。大事なのは、経営者の想いを整理し、それを次の世代につなげるための設計図を描くことです。

会社を残すというのは、単に法人格を残すことではありません。経営理念や技術を引き継ぐこと、従業員を守ること、そして取引先をはじめとするステークホルダーとの信頼関係を維持すること、地域経済や社会への貢献を続けていくことでもあります。そうした意味で、事業承継は非常に社会的な意義のある仕事だと思います。

だからこそ私は、これまで培ってきた経験や知見を今度は中小企業の未来をつなぐために活かしていきたいと思っています。

事業承継を考え始めた経営者の方は、まずは一度当社にご相談いただければ幸いです。

村上 智史のプロフィール写真
プロフィール

村上 智史

バトン・コンサルティング株式会社 代表取締役

早稲田大学を卒業後、1987年に三井不動産株式会社入社。地主との共同事業のための事業企画提案、ビル賃貸事業、J-REIT(不動産投資信託)の立ち上げなどを経験する。一方、自宅マンションの管理組合理事長の経験から、マンション管理士の資格を取得後、2013年に株式会社マンション管理見直し本舗を設立し、独立起業する。2025年に中小企業の事業承継に特化したコンサルティング会社として新たに「バトン・コンサルティング株式会社」を設立し、経営者に寄り添う伴走型支援を行っている。

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