障がい者雇用で情シスを支える。アストンが描く新しい働き方|アストン
株式会社アストンは、埼玉県さいたま市を拠点に、法人向けIT環境サポート、コールセンター、情報処理、人材派遣、ITスクールなどを展開してきた企業です。1998年の設立以来、パソコンスクールを起点に、時代の変化に合わせて事業領域を広げてきました。
2023年に代表取締役CEOへ就任した上西龍氏は、創業当初から同社に関わってきた一人です。アフターコロナによって働き方や営業手法、企業のIT環境が大きく変わるなか、同社は本社移転やサービス再編、就業規則の見直しなど、次の時代に向けた変革を進めています。
その中で新たに力を入れているのが、障がい者雇用と社内ITサポート業務を組み合わせた支援モデルです。企業の情報システム部門が抱える人手不足や属人化の課題に向き合いながら、障がいのある方がITスキルを身につけ、継続的に働ける環境をつくる。上西社長が長年温めてきた構想と、アストンのこれからについてお話を伺いました。
まず、アストンの歩みと事業内容について教えてください。
アストンには、「日々進化するテクノロジーと人の力を融合させ、働き方をアップデートする」というミッションがあります。
現在は、法人向けのITサポート、コールセンターやヘルプデスクを中心としたBPO、情報処理、そして人材関連の事業を展開しています。そこに新しく加わったのが、障がい者雇用を社内ITサポートと組み合わせる取り組みです。
もともとの始まりは、カルチャースクールでした。生け花やフラワーアレンジメント、英会話などがある中に、ワープロ教室があったんです。その後、Windows 95が登場し、これからはパソコンの時代になるという流れの中で、パソコンスクールに特化していきました。
さらに、スクールで学んだ生徒さんに仕事を紹介するところまでやろうということで、人材派遣の事業へ広がっていきました。法人化したのが1998年6月です。私は創業者と一緒に立ち上げメンバーとして入ったので、会社に関わってからもう29年目になります。

代表就任は、どのようなタイミングだったのでしょうか。
代表に就任したのは2023年です。ちょうどその頃は、新型コロナウイルスが5類に移行し、世の中がアフターコロナへ向かっていたタイミングでした。
コロナ禍を経て、働き方や価値観は大きく変わりました。商談はオンライン化し、インサイドセールスの重要性も高まり、企業が求めるアウトソーシングの形も変化していきました。創業者にとっても、そのタイミングで次の体制へ移行するのが一番良いと考えたのだと思います。
自分自身としては急に言われた感覚もありましたが、振り返ると、以前から仕事の動かし方や資金面など、かなり任せてもらっていました。今思えば、少しずつ準備をしてもらっていたのだと思います。
代表就任後は、25年続けてきた戦い方をそのまま続けるのではなく、思い切って変えなければならないと考えました。最初の1年は会社の数字や情報を整理し、戦略を立て直すことに時間を使いました。その後、本社移転、拠点の見直し、就業規則の見直し、新規事業の立ち上げなどを進めています。まだ変革の途中ですが、段階を踏んで会社を次の形にしていこうとしています。
障がい者雇用支援に取り組む背景を教えてください。
障がい者雇用は、学生の頃からいつかやりたいと思っていたテーマでした。
もともと福祉系の学校に通っていて、障がいのある方の生活支援などに、実習やボランティアで関わる機会がありました。その中で、作業所で働く方々を見て、「障がい者」という枠で一括りにされていることに違和感を持ったんです。
本当は、その人に合った仕事や、もっと違う選択肢があるはずだと思っていました。そこにパソコンやインターネットが普及し始めた。これからの時代は、ITによって働き方の選択肢が広がるのではないかと感じました。
アストンはパソコンスクールをやっていて、そこから派遣やBPOに広がっていきました。創業者にも、「いずれノウハウができたら、独立して障がい者雇用支援の会社を立ち上げます」と伝えていました。そのまま長い時間が経ちましたが、自分が代表になったことで、ようやく本格的に形にできる段階に来たと感じています。
社内ITサポートと組み合わせる狙いは何ですか。

まずは、IT就業センターで、実際の業務を障がいのある方と一緒に進めながら、ノウハウを蓄積していきたいと考えています。
業務としては、PCのキッティング、ヘルプデスク、IT機器やアカウント管理、マニュアル作成、情報システム部門のサポートなどが中心になります。企業の中では、情シス機能が一人に属人化していたり、総務の方が兼務していたりするケースが少なくありません。特に従業員100〜200名規模の会社では、専任部署を置くのが難しい一方で、ITまわりの業務は確実に増えています。
そこに、障がい者雇用を活用した新しい形の社内ITサポートを提供できれば、企業にとっては業務負担の軽減になり、働く方にとっては実務を通じてスキルを身につける機会になります。
最初は一つの拠点で経験を積み、将来的には地域ごとに同じような場所をつくっていきたいと考えています。障がいの特性は人によってさまざまですし、自宅の近くでないと働きづらい方もいます。一方で、地域企業も人材確保に苦労している。そこをうまくつなぐことができれば、地域の中で新しい雇用の循環を生み出せるのではないかと思っています。
企業側の意識には、どのような変化を感じていますか。
企業によって、意識の差ははっきりしています。積極的に取り組んでいる会社は、法定雇用率の枠だけで考えるのではなく、戦力として活かす発想を持っています。一方で、まだ自社には関係ないものとして捉えている会社もあります。
ただ、取り組めていない企業の多くは、決して意欲がないわけではありません。どう採用すればいいのか、どんな仕事を任せればいいのか、社内に受け入れ体制をどうつくればいいのかが分からないのだと思います。
BPOやアウトソーシングも同じで、外に出したい仕事はあるけれど、業務の切り分けや指示の出し方が難しいという会社は多いです。まずは外部に出せる形へ業務を整理し、誰が担当しても品質が変わらない状態をつくる。その過程で障がいのある方との接点が増えれば、企業側の理解も進んでいくはずです。
今後、どのような展開を目指していますか。
当面は、埼玉を中心に、地域企業と連携しながらモデルをつくっていきます。ただ、将来的には全国に広げていきたいと考えています。
テクノロジーによって働き方はこれからも変わります。だからこそ、私たちもその変化に合わせて、働く場所や仕事のつくり方をアップデートし続けなければなりません。障がいのある方にとっても、企業にとっても、無理なく続けられる仕組みをつくることが大切です。
現在は、仕事を出してくださるパートナー企業も集まり始めています。自社で障がい者雇用を始めるにはまだ早いという企業でも、BPOとして業務を委託することで、障がいのある方の仕事づくりに関わることができます。
雇用する会社、仕事を依頼する会社、働く人。それぞれが少しずつ関わることで、新しい働き方の選択肢が広がっていく。アストンとしては、その接点をつくる会社でありたいと思っています。

上西 龍
株式会社アストン 代表取締役CEO。創業当初から同社に関わり、パソコンスクールを起点に、人材派遣、BPO、法人向けITサポートなどの事業拡大に携わる。2023年に代表取締役CEOへ就任。アフターコロナによる働き方や企業のIT環境の変化を受け、本社移転や事業再編、新規事業の立ち上げを推進。現在は、障がい者雇用と社内ITサポートを組み合わせた新たな就業支援モデルの構築に取り組んでいる。