事業承継の“決められない”に寄り添う、修羅場を越えた社外パートナーCFO|株式会社プレアス
2019年の創業以来、社外パートナーCFOとして中小・ベンチャースタートアップ企業の経営支援を行う株式会社プレアス。代表の水野靖彦さんは、事業承継・資金調達・IPO・M&A・事業再生など、数々の「経営の修羅場」をハンズオンで経験してきました。後継者が自信を持って意思決定できる会社づくりに込めた熱い想いを伺いました。
まず、水野様のこれまでのご経歴について教えてください。
もともとは事業会社の管理部門で、財務経理・経営企画・IRに携わってきました。松下電器(現パナソニックホールディングス)では約10年間、経理職能として事業場経理や連結決算、各種プロジェクトに関わりました。その後、ファーストリテイリングでは海外ユニクロ事業やリンク・セオリー事業の経理責任者、IFRS(国際財務報告基準)導入プロジェクトなどを担当し、テイクアンドギヴ・ニーズでは経営企画、財務経理、IRの責任者として、全社経営戦略の策定や投資家対応に携わりました。
2015年以降は、複数の事業会社でCFO(取締役・執行役員・管理本部長等)を歴任し、資金調達・上場準備・M&A・資金調達・事業再生、そして管理部門の立ち上げなどをハンズオン(実務密着型)で経験しました。こうした豊富な実務経験をもとに2019年に株式会社プレアスを設立し、現在は「社外パートナーCFO」として、中小企業やベンチャースタートアップ企業の経営者を幅広く支援しています。
社外パートナーCFOという立場を選ばれた背景を教えてください。
大きなきっかけとなったのは、私自身がCFOとして参画した、あるオーナー企業の事業承継案件でした。当時の社長は70代半ば、40代の息子さんもすでに社内におり、まさに親から子へ会社を引き継いでいく過渡期にありました。会社としてIPO(新規上場)を目指し、さらなる事業成長を描いていた矢先、入社からわずか8カ月ほどで社長が突然亡くなられてしまったのです。
オーナー企業において、創業者や先代社長の存在感は極めて大きいです。その経営トップが突如いなくなると、業績だけでなく、組織の求心力、親族間の関係、相続問題、そして日々の意思決定の流れにいたるまで、すべてが一気に揺らぎます。実際にその会社でも、会社を立て直すための経営判断と、親族間の繊細な調整が同時に発生し、非常に過酷な状況に陥りました。
私はCFOとして、会社名やブランドの刷新、本社移転、収益性の低い事業の整理など、痛みを伴う大規模な構造改革を進めました。最終的に会社は危機を脱し、のちに東証市場上場も果たしましたが、その過程では私自身が社員皆さんへ直接リストラとしての拠点整理や人員削減を伝えなければならない場面もありました。経営者として必要な意思決定であるとはいえ、自らの決断で発する言葉が、社員皆さんの人生を大きく変えてしまう場面に対峙した時、あの時の社員皆さんの表情や言葉(驚き・悲しみ・怒り)は、今でも決して忘れることができません。
この経験を通じて私が痛感したのは、「社長の孤独な想いを支えながら、数字や資金、組織の仕組みを冷静かつ客観的に整えてくれる『右腕』が絶対に必要だ」ということでした。
しかし、中小企業がフルタイムの優秀なCFOを採用するのは、コスト的にも採用市場的にも現実的ではありません。だからこそ、必要な時に必要なボリュームで社外から経営者を支える「社外CFO」という形で、会社の不足しているピースを埋められないか。ーーそう考えたことが、プレアス創業の原点になっています。
“Be Partners, Be Innovators” 社外パートナーCFOとして企業に活力を与え、日本を革新する、これこそが当社のミッションです。
社外パートナーCFOとして、具体的にはどのような支援をされているのでしょうか。
CFOというと、資金調達や決算、税務といった「お金まわり」の業務だけを担当するイメージが強いかもしれません。もちろんそれらは土台として必要不可欠ですが、外部環境の変化が非常に激しい今の中小企業や事業承継企業を支えるには、それだけでは不十分です。会社を成長させるための「攻め」と、会社を予期せぬリスクから守るための「守り」の両輪を回す必要があります。
具体的には、経営戦略や中期経営計画の策定、予実管理やKPI/KGI(業績評価指標)の設計、資金調達、M&A、上場準備といった「攻め」の領域から、人事制度の構築、採用支援、会議体の整備、管理部門の仕組みづくりといった「守り」の領域まで、経営者の右腕として必要なあらゆるフェーズを幅広く支援しています。時には重要な経営会議に参加して社長の“壁打ち相手”になり、時には採用面接に同席したり、金融機関とのハイレベルな交渉を代行・支援したりすることもあります。
私が何より大切にしているのは、単なるアドバイスやレポートの提出だけで終わらせないことです。経営者と同じ目線で徹底的に議論しながら、必要であれば自ら現場に入り込み、資料を作成し、実務まで一緒に泥臭く現場の実務家目線で進めます。
「客観的なアドバイスしかしないコンサルタント」ではなく、私自身が事業会社で経営者と実務家の両面を深く経験してきたからこそできる、経営の専門家としてのディスカッションパートナーであり、そして実務のハンズオンサポーターであること。これこそがプレアスの最大の特徴です。
経営者からは、どのような相談が多いのでしょうか。
成長スピードが求められるベンチャースタートアップ企業からは、やはり資金調達に関する相談が圧倒的に多いです。エクイティ(株式)での調達や銀行融資、緻密な資本政策の立案、IPOやM&Aを見据えた事業成長のストーリーづくりなど、「攻め」のためのお金をどう集めるかというテーマが中心になります。
一方で、事業承継を控えた企業や地方の中小企業の場合、最初から「人事制度を刷新したい」「この手法で資金調達をしたい」と明確な課題を持って相談に来られるケースは多くありません。むしろ、社長ご自身も「なんとなく課題があることは分かっているけれど、それが具体的に何なのか、どこから手をつければいいのかが分からない」というように、悩みが言語化できていないケースがほとんどです。
「経営とは矛盾との戦い」であり、経営者はヒト・モノ・カネの限られたリソースの中で最善の意思決定をせざるを得ません。一方で経営者は常に孤独であり、日々の山積する意思決定や業務に追われる中で、本音で相談できる相手が社内にいません。だからこそ私は、まず社長の頭の中にあるモヤモヤとした悩みを徹底的な対話によって一緒に言語化し、絡み合った課題を紐解いて優先順位をつけることからスタートしています。
支援の特徴として、他社との決定的な違いはどこにありますか。
大きく3つのアプローチが異なります。
1点目は、徹底した「参謀」としてのスタンスです。会計士や税理士のように、外側から数字を「分析」して指摘するだけで終わるのではなく、必要であれば経理担当者と一緒に泥臭く仕訳を考えたり、採用面接の現場に同席したりと、同じ船に乗る当事者として手を動かすハンズオンの姿勢を貫いています。
2点目は、後継者が半年という短期間で「意思決定できる社長」になれるよう、独自の「経営の武器」を揃えている点です。その筆頭が「生成AIの活用」です。情報のブラックボックスを解消し、即断即決できる筋肉質な体制を作る上で、今の時代、経営者がAIを使いこなすことは必須条件だと考えています。
3点目は、単に経営者に「寄り添う」だけではないという点です。時には耳の痛い厳しい数字を突きつけ、果敢な変革を迫ることもあります。それができるのは、理論だけを語る外部のコンサルタントではなく、私自身が取締役や監査役を歴任し、自らも代表取締役社長として会社を経営する一人の当事者だからです。同じ痛みを分かち合える当事者の言葉だからこそ、経営者の心に響く価値があると信じています。
事業承継支援において、水野様が特に大切にされている視点は何ですか。
世間一般の事業承継は、どうしても自社株の評価や相続問題、節税対策といった「テクニカルなお金の話」に終始しがちです。もちろんそれらも重要ですが、それだけで会社が存続し、前に進むわけではありません。事業承継とは、株主としての立場を引き継ぐだけでなく、社長としての「経営そのもの」を引き継ぐ営みです。つまり、個人の資産や家族の感情という極めて私的な問題と、会社の未来や組織の改革という公的な問題が、複雑に絡み合うテーマなのです。
既存の専門家(税理士なら税務、弁護士なら法務、社労士なら労務)は、それぞれの領域において個別最適なアドバイスをくれますが、全体を統合して「結局、経営者として今、何を最優先に意思決定すべきか」という全体像を示してくれる存在は稀です。
だからこそ私は、CFOという全体を俯瞰する視点から、数字、組織、資金、事業計画、そして親子関係や外部専門家とのアライアンスまでを一気通貫で見渡す支援を大切にしています。事業承継の現場には、論理だけでは解けない「感情のもつれ」が必ずあります。そこから逃げずに正面から向き合い、本音を整理して、会社が次の一歩を踏み出せる状態をつくることが私のミッションです。
親子間の対話支援では、どのような壁があるのでしょうか。
最大にして最初の壁は、「そもそも肝心な対話ができていない」という点です。先代社長は「いつか話そう」と思いながら日々の業務に追われ、後継者側も「自分から身を乗り出して聞くのは遠慮してしまう」というように、お互いを想うがゆえに遠慮し、肝心な話が進まないまま時間だけが過ぎていくケースが非常に多いです。
もう一つの壁は、「親と子で使っている言葉の定義(ニュアンス)が違う」ために起きる衝突です。先代は会社を守りたい一心から、子に対してつい「まだ足りない」「未熟だ」と厳しい言葉をぶつけてしまいます。一方で後継者は「親のやり方は時代遅れだ。新しい変革をしなければ会社は潰れてしまう」と反発します。実は「会社を存続させたい、良くしたい」という根本の想いはまったく同じなのに、感情的な言葉が邪魔をして、互いを攻撃し合っているように見えてしまうのです。
そのため私は、まず先代社長と後継者それぞれの本音や不安を個別にじっくりとヒアリングし、言語化します。その上で、先代の言う「まだ足りない」という抽象的な言葉を、具体的にスキルの問題なのか、社員との関わり方なのか、あるいは経営判断の軸の話なのかへと丁寧に分解(翻訳)していきます。同時に後継者側にも、既存事業のどこを受け継ぎ、どこに新しく挑戦したいのかを整理してもらいます。こうしてお互いの感情のしこりが「ほぐれた状態」を作った上で、初めて三者で同じ場に入り、生産的な対話を進めていきます。
これまでの事業承継支援で印象に残っている事例を教えてください。
ある地方でディスカウントストアを展開されている企業の支援事例が、非常に象徴的です。当初は大手企業からM&A(会社売却)の打診が来ており、「提示された売却価格が妥当なのか」「どのように手続きを進めればいいか」という、いわば出口の相談からスタートしました。
しかし、お打ち合わせを重ねる中で、私が「社長、M&Aという選択肢はいったん脇に置いて、社長として『本当は』この会社や事業をどうしていきたいですか?」と本音を伺ったんです。
すると社長の口から、「本当はM&Aで手放したくない。自分で事業をもう一段成長させ、息子にしっかりとこの会社を継がせたい」という言葉とともに、胸に秘めていた強い想いがあふれ出てきました。
そこで私はM&Aの検討をストップし、5年後、10年後の未来を見据えた「中期経営計画」の策定へと舵を切りました。そのディスカウントストアの成長の鍵は、新規出店にありました。出店を加速させるためには、新店用地の確保と巨額の資金が必要です。緻密な事業計画と出店計画を練り上げ、それを日経新聞の地域版に戦略的に掲載してもらうことで、金融機関や有力な不動産会社から次々とお声がかかる仕組みをつくりました。結果として、銀行融資とリースを組み合わせ、総額10億円以上の資金調達に成功し、複数店舗の同時出店計画が劇的に進んでいきました。
事業承継支援というと、相続税や親子の話し合いといった内向きな話に閉じがちですが、本当に大切なのは「会社のワクワクする未来を描き、そのために必要な資金、人材、仕組みを整え、次の世代が思いきり挑戦できる強固な舞台を用意すること」なのだと、私自身も深く実感した事例です。
ATONEXT あとつぎ実装塾では、どのような支援を行っているのでしょうか。
『ATONEXT』は、あとつぎ社長が半年という短期間で、自信を持って「即断即決・意思決定できる」状態になることを目指す、超・実践実装型の後継者育成プログラムです。主な対象は、30代から50代の後継者や、近い将来に事業承継を予定されている方々です。
経営経験が十分でないままトップに立つと、数字の読み方、資金繰り、組織マネジメント、先代との人間関係、新規事業の立ち上げ、さらには最先端の生成AI活用にいたるまで、考え決断すべきことが一気に押し寄せ、多くのあとつぎがパンクしてしまいます。
そこで『ATONEXT』では、あとつぎ社長に必要な能力を「意思決定力」「経営管理力」「人財活用力」「リスク管理力」「事業承継力」「生成AI活用力」「事業推進力」の7つに体系化し、ヒト・カネ・時間が限られた中小企業のリアルな現場で「何を優先し、どう決めるか」にトコトンこだわって並走します。
特に最近力を入れているのが「生成AIの経営実装」です。「AIを使わなければ」と焦りつつも、何から手を付ければいいか分からない中小企業は多いです。私たちはAIを単なる効率化のツールとしてだけでなく、「経営者の孤独な脳内を整理する最高の壁打ち相手」として使いこなす手法やAIエージェントの導入・活用方法まで伝授し、日々のKPI管理や事業戦略の構築に落とし込むまでを実践的に伴走しています。
水野様が事業承継領域に力を入れるようになった背景を教えてください。
原点にあるのは、先ほどお話しした「CFO時代に直面した先代社長の急逝案件」です。事前の準備がない中でトップを失い、会社も親族も大混乱に陥る姿を間近で見た経験から、「事業承継は、あらかじめ正しく準備しておかなければ、会社に関わるすべての人を不幸にしてしまう」という強い危機感が刻まれました。
もう一つの決定的な転機は、コロナ禍でした。売上が急激に減少し、手元の資金が減っていく恐怖の中で、親世代の社長やあとつぎ社長が、誰にも相談できずに一人で夜も眠れずに苦しんでいる姿を数多く目の当たりにしました。国の支援融資などで危機をしのいだ企業も多いですが、その借入を抱えながら「どう事業を再構築し、次世代へつなぐか」という本質的な課題は、今なお日本のあちこちに残されたままです。
日本の全企業の99%以上は中小企業であり、地域経済や雇用、脈々と受け継がれてきた素晴らしい技術や文化を支えているのは彼らです。事業承継がうまくいかないという理由だけで、これらの優良な企業が社会から消えてしまうことは、日本全体にとって計り知れない損失です。
だからこそ、自分がこれまでグローバル企業やベンチャーの修羅場で培ってきた、資金調達、経営管理、事業再生、組織づくり、そして最先端の生成AIの知見をすべて注ぎ込み、事業承継に悩む経営者や後継者の羅針盤になりたいーー。その強い想いが、私の事業活動を突き動かしています。
最後に、第二創業や新たな挑戦を考えている後継者へメッセージをお願いします。
いま、多くの後継者の方が「先代と同じやり方の既存事業だけでは、これからの時代は生き残れない。新しい挑戦をしなければならない」と危機感を持たれていると思いますが、その直感は100%正しいです。外部環境の変化のスピードは凄まじく、会社を守り続けるためにも、既存の強みを活かしながら新規事業の立ち上げやデジタルシフト、生成AI活用といった「攻めの第二創業」に挑むことは必須です。
ただ、変革を起こそうとしたときに最大の壁となるのが、社内の「人材」です。社内にはこれまで会社を支えてきてくれた功労者や古参の社員がいますが、必ずしも彼らが「リスクを取って新しい変革を推進できる人材」であるとは限りません。むしろ、変わることへの抵抗感や不安を示すことの方が多いでしょう。
だからこそ後継者の皆様にお伝えしたいのは、「社内のリソースだけで解決しようとせず、もっと外部のプロフェッショナルを頼り、使い倒してほしい」ということです。
事業承継を控える企業は、親族の問題や相続の話、自社の課題を外に出すことをためらい、自前で完結しようとする強い傾向があります。しかし、これだけ変化の早い時代に、すべてを自社だけで抱え込んでいては、スピード負けしてしまいます。
信頼できる外部のパートナーを「自分の強力な経営の右腕」としてチームに引き込み、会社を次のステージへと一気に引き進めていく。そして何より、先代としっかり向き合って本音で会話をすること。言葉を交わさなければ、事業承継は1ミリも前に進みません。
後継者のあなたが一人で孤独に抱え込む必要はありません。必要なチカラを賢く借りながら、覚悟を持って意思決定し、ワクワクする新しい未来への挑戦に踏み出してください。私はいつでも、その一番近くで伴走し続けます。
水野 靖彦
上場企業の財務経理・経営企画・IR等に従事した後、複数の事業会社でCFO(取締役・執行役員・管理本部長等)を歴任。松下電器(現パナソニックホールディングス)、ファーストリテイリング、テイクアンドギヴ・ニーズなどで経理・経営企画・IRの責任者を務め、資金調達・上場準備・M&A・事業再生・管理部門の立ち上げをハンズオンで経験した。2019年に株式会社プレアスを設立し、「社外パートナーCFO」として中小企業やベンチャースタートアップの経営者を幅広く支援。後継者育成プログラム『ATONEXT(あとつぎ実装塾)』も主宰し、事業承継・資金調達・生成AIの経営実装まで一気通貫で伴走している。
